■昔はライフルで戦ったが今は空爆と無人機

 薄暗い地階に戻ると、ギュルジャン氏を部下の男性職員数人が待ち受けていた。大半が迷彩服だ。

 ナゴルノカラバフをめぐる衝突が再び起きたのは最悪のタイミングだったとギュルジャン氏は振り返る。「道路の補修工事が終わったばかりで、アパートを買う市民も増え、(ザクロの)実が熟れてきていた」

 9月27日に軍事衝突が勃発して以来、アルメニアとアゼルバイジャン両国の死者はこれまでに1200人を超え、マルタケルトでは(10月20日時点で)3人の死者が出ている。

「(戦闘が)また始まるとは」。ナゴルノカラバフは1990年代のソ連崩壊時にアゼルバイジャンからの独立を宣言し、その際の紛争で約3万人が死亡。以来、同地域をめぐり、数十年にわたって散発的に戦闘が起きてきた。

「でも、昔とは武器が違う。今や空爆と無人機だ。前はライフル銃だった」と話すギュルジャン氏は、最初の紛争に参加した退役軍人だ。

 電話が鳴り、すぐに受話器を取った。町の現状を知りたいという避難住民からの問い合わせだ。

「大丈夫…今は落ち着いています」。電話を切ると、睡眠不足で充血した目でたばこに火を付け、ギュルジャン氏は言った。「戦闘が終われば、何もかも立て直す」 (c)AFP/Emmanuel PEUCHOT