【10月21日 AFP】2018年10月にトルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺害されたサウジ人ジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏の婚約者と、カショギ氏が設立した人権団体は20日、損害賠償を求めてサウジの皇太子と複数の当局者を相手取り、米首都ワシントンの連邦裁判所に提訴した。

 カショギ氏の婚約者でトルコ国籍のハティージェ・ジェンギズ(Hatice Cengiz)さんと、カショギ氏が設立した人権団体「デモクラシー・フォー・ザ・アラブ・ワールド・ナウ(Democracy for the Arab World NowDAWN)」は、2018年10月2日にカショギ氏を殺害したとして、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)と他28人に損害賠償を求めた。

 ジェンギズさんはカショギ氏の死によって身体的損害と経済的損失を受けたと主張し、DAWNは創設者で中心的人物だったカショギ氏を失ったことで、団体運営と目的達成が妨げられたとしている。

 原告側は「カショギ氏に対する冷酷な拷問と殺害は世界中の人々の良心に衝撃を与えた」「殺害の目的は明確だった。カショギ氏が米国で、主に原告であるDAWNの事務局長として行っていた、アラブ世界の民主改革を求める活動を阻止するためだった」としている。

 ジェンギズさんとDAWNは、サウジでは公正な裁判が期待できず、トルコでは刑事事件として司法手続きが進められているため民事訴訟を起こすことはできないと専門家に言われたため、米ワシントンで提訴することにしたとしている。殺害当時カショギ氏はワシントンの近くに住まいがあり、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)のコラムニストとしても働いていた。

 ジェンギズさんは、カショギ氏とはイスラム教の伝統にのっとった結婚をしており、民事婚をする準備をしていたと語った。原告側は、民事婚に必要な書類を取得させるためイスタンブールに行くようカショギ氏に指示したワシントンのサウジ大使館も殺害計画に関与していたと主張している。(c)AFP