【10月20日 AFP】シンガポールは世界で初めて、国の身分証明システムに顔認証を導入する。一方で悪用されやすいとして、プライバシーに関して懸念の声が上がっている。

 来年からシンガポールに暮らす数百万が、顔認証一つで行政や銀行などのサービスを利用できるようになる。

 生体認証を使用することで、多くの日常的な作業の中でパスワードを記憶したり、セキュリティードングルを用意したりする必要がなくなると、顔認証技術の開発者らは語る。

 この技術は空港でのセキュリティーチェックから、アップル(Apple)やグーグル(Google)の製品に至るまで、世界中でさまざまな形で採用されている。

 しかし、国の身分証明システムに顔認証技術を導入するのはシンガポールが初めてで、この取り組みは最も大掛かりなものの一つとなる。

 シンガポールの政府技術庁(GovTech)と連携し、顔認証技術の実装に携わるデジタルコンサルタント会社「トッパン・エカリア(Toppan Ecquaria)」のリー・シー・リン(Lee Sea Lin)氏によれば、セーフガードにより一連の認証過程の安全性は確保されるという。

 顔認証技術は国のデジタル身分証明システムに組み込まれており、現在、税務当局や年金当局などの一部官庁で試験運用されている。

 シンガポール当局は、政府に批判的な人々に矛先を向け、異議を唱える人に対して強硬路線を取っているとたびたび非難されている。また活動家らは、顔認証技術がどのように使用されるか懸念を示している。

 政府技術庁の担当者は、どのデータも第三者に一切共有されないとした上で、サービスの利用者には個人用パスワードの設定など、サービスの利用に関して他の選択肢も用意されると説明。「これは監視ではない」「用途は極めて限定的だ」と述べた。

 映像は1日撮影。(c)AFP/Martin Abbugao