【10月17日 AFP】新型コロナウイルス感染症患者への対応ですでに手いっぱいの病院を医療崩壊から守ろうと、米保健当局は国民にインフルエンザのワクチン接種を強く呼び掛けているが、ソーシャルメディア上ではワクチンをめぐる誤った情報が飛び交っている。

 ソーシャルメディアで特に目に付くのは、インフルエンザワクチンを接種すると新型コロナの感染リスクが高まる、もしくはコロナ検査で陽性反応が出るといった間違った情報だ。

 フェイスブック(Facebook)やインスタグラム(Instagram)では、インフルエンザワクチンの接種により感染リスクが36%上昇するとの偽情報が拡散。また、仏製薬大手サノフィ(Sanofi)のインフルエンザワクチン「フルゾン(Fluzone)」の接種による死亡率が、新型コロナ感染症の死亡率の2.4倍だとのうその投稿もあった。

 米ミシガン大学(University of Michigan)が実施した全国調査によると、今年は父母の3人に1人が子どものインフル予防接種を行わない意向であることが分かった。その理由に挙げられたのは、効果がないといった個人的所見を含む誤った情報だった。

 専門家らはインフルエンザワクチン接種の重要性を訴えているが、いくつかの州で新型コロナの感染が記録的なペースで広がっており、インフルエンザワクチンをめぐるデマは接種を阻む障壁となっている。

 米疾病対策センター(CDC)によると、2018~2019年のインフルエンザワクチンの接種率はわずか49.2%だった。しかしカナダ・ブリティッシュコロンビア州疾病対策センター(BCCDC)の専門家は、「インフルエンザの予防接種と新型コロナウイルスの感染リスクとの間の因果関係は、子どもにも大人にも見られない」と話す。

 ソーシャルメディアは誤った情報の温床となっている一方、ワクチンに関して信頼性の高い情報を広める取り組みも行っている。フェイスブックは今週、予防接種を受けられる施設の情報にユーザーを直接誘導する取り組みを始めると発表。また、ワクチン接種をためらわせるような広告を排除すると表明した。

 パデュー大学(Purdue University)看護学部のリビー・リチャーズ(Libby Richards)准教授は、「今年のインフルエンザ予防接種は例年以上に重要だ」と述べ、「接種は自身の健康を守るだけでなく、すでに逼迫(ひっぱく)している医療システムへの負担を減らすことにもつながる」と強調した。(c)AFP/Marisha GOLDHAMER