【10月16日 AFP】タイ警察は16日、首都バンコクの首相府周辺で14日に行われた大規模デモの最中に、王妃に対する暴力を禁じる法律に違反したとして、エーカチャイ・ホンガンワーン(Ekachai Hongkangwan)氏とブングアノン・パオトーン(Bunkueanun Paothong)氏を逮捕した。この法律が適用されるのはまれ。

 タイ政府は15日、5人以上の集まりを禁止する緊急事態宣言を発令したが、デモ隊はこれを無視し、バンコク中心部ラチャプラソン(Ratchaprasong)の交差点に1万人以上が集結した。

 スティダー王妃(Queen Suthida)が乗った車列を妨害したデモ参加者は複数いたが、なぜこの2人だけが逮捕されたのかは分かっていない。

 ブングアノン氏は16日朝にフェイスブック(Facebook)で、警察に出頭すると述べた。この中で同氏は「王妃を傷つけようとした疑いが掛けられている」「私は無実だ。そのような意図はなかった」と語った。

 エーカチャイ氏はAFPの電話取材に対し、ブングアノン氏と同様の容疑が掛けられていると話した。その後、警察は同氏を拘束したことを認めた。

 王妃または王妃の自由に対するいかなる暴力行為も禁じるこの法律は、過去数十年間適用がなかった。エーカチャイ氏とブングアノン氏は有罪の場合、終身刑を科される可能性がある。

 一連の民主派抗議デモの参加者に重罪の容疑が掛けられるのは今回が初めて。これまでも逮捕者はいたが、扇動や新型コロナウイルス感染防止のための集会禁止違反など比較的軽い容疑だった。

 若者を中心とする民主派デモは、王族を批判から保護する厳格な不敬罪の廃止と、王族が政治に関与しないことを求めている。15日のデモ参加者らは警察官に対し、「仲間を釈放しろ!」「プラユット、退陣しろ!」などとシュプレヒコールを上げた。

 一方、プラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)首相は退陣の考えはないと表明。「辞めない」「私が何か誤ったことをしたとでもいうのか」と述べた。(c)AFP