【10月16日 AFP】農地など人間の用途のために開発されて久しい土地の生態系を30%回復できれば、絶滅が予測されている動植物種の70%が救われ、産業革命以降の人間活動で排出された二酸化炭素(CO2)量の半分が吸収できる──地球を癒やすための野心的な青写真を描いた論文を、国際専門家チームが14日に発表した。ただし、適切な回復対象を選ばなければ、最大限の効果は望めないとしている。

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 筆頭著者でブラジルのリオ・カトリック大学(PUC-Rio University)で教える国際持続可能性研究所(International Institute for Sustainability)のベルナルド・シュトラスシュブルグ(Bernardo Strassburg)所長は、「優先度の高い地域で生態系を回復することで、気候と生物多様性の二重の危機の克服に大きく貢献できる」とAFPに語った。

 研究では、かつて湿地だった土地を元の自然状態に戻すことが、種の保全と地球温暖化の抑制の両面で最も費用対効果が高いと分かった。

 2番目の優先分野は熱帯雨林だが、温帯林やサバンナ、低木地などあらゆる種類の生態系に、それぞれ果たすべき役割があるという。生態系の回復を目指すべき面積は合わせて約900万平方キロで、ブラジルの国土とほぼ同じ広さとなる。

 研究チームはコスト面にも着目。手当たり次第に保全活動を行うよりも、重要な地域に集中的に投資するほうが、費用効率性は少なくとも10倍向上すると結論付けた。

 シュトラスシュブルグ氏は、国連(UN)が2020年代を「生態系回復の10年(Decade of Ecosystem Restoration)」と位置付けている点を指摘。自然環境を再生するほうが、工学的・技術的な解決策を開発するよりはるかに安価な「手に届く果実」だと考えている企業も多いとして、「新型コロナウイルス流行による経済危機からの回復に際し、各国が環境にやさしい方法を選択するかどうかに多くが懸かっている」と述べた。(c)AFP/Marlowe HOOD