【10月16日 AFP】タイ全土でこの3か月間、学生たちが率いる民主派デモが激しさを増している。デモの参加者らは、批判不可能とされてきた王室の改革を求めて異例の声を上げている。

 15日早朝、政府は非常事態宣言を発令し、5人以上の集会を禁じた。同日、主要な指導者らを含むデモの参加者20人以上が逮捕された。

■デモ隊の要求は?

 抗議行動に参加している人々はまず、プラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)首相の退陣を求めている。元陸軍司令官のプラユット氏は、2014年にクーデターで政権を掌握して以降、5年間にわたって軍事政権を率いた。この軍政下で新憲法が起草され、昨年、新憲法下初の総選挙が実施された。

 この総選挙の結果、プラユット氏は文民政府を率いる首相として選出されたが、これについては新憲法の条項が同氏に有利に働いたと専門家らは指摘している。デモの参加者らは、プラユット氏選出に至る全ての行程が裏切りであると非難し、議会の解散、憲法改正、デモに対する弾圧の中止を求めている。

 さらにデモの参加者らは、強大な力を有する王族を批判からかばう不敬罪の廃止を含む、10項目の王室改革要求を掲げた。

■なぜ今なのか?

 若者の間で人気のある野党・新未来党(Future Forward Party)の指導者らが政治活動を禁止された2月以降、不満が沸き立っている。デモの参加者の多くは、新未来党の排除は政治的な動機によるものだと非難している。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によるロックダウン(都市封鎖)は、タイの経済状況を急激に悪化させ、富裕層と貧困層の間にある亀裂を露呈させた。

 さらに今年6月には、カンボジアで亡命生活を送っていたタイの著名な民主活動家ワンチャルーム・サッサクシット(Wanchalearm Satsaksit)氏が失踪した。ツイッター(Twitter)上には、その答えを求める活動家らの抗議が広がった。

 7月半ばになると、ネット上の抗議が現実の抗議デモとなり、タイ全土に波及。9月中旬には、2014年のクーデター以降、最大規模となる約3万人がデモに参加した。