【10月15日 AFP】オーストラリア北東部沖に位置し、世界遺産(World Heritage)にも登録されている世界最大のサンゴ礁「グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)」では、過去25年間でサンゴの半数が死んだ。科学者らが14日、発表し、気候変動によって水中の生態系が不可逆的に破壊されていると警鐘を鳴らした。

 英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に掲載された研究論文によれば、1990年代半ばより、あらゆる大きさのサンゴが憂慮すべき速度で減少しているという。

 枝状やテーブル状のサンゴなど大きな種が最も影響を受けており、これらの種はグレートバリアリーフの最北部からほぼ姿を消している。

「25年前と比べて、これらのサンゴは概して(最大で)80~90%激減している」とAFPに語るのは、論文の共同執筆者で、ジェームズクック大学(James Cook University)のテリー・ヒューズ(Terry Hughes)教授。

 同教授は「サンゴは魚などの生物にとって隠れ場や死角となるため、大きく立体的なサンゴが無くなると、より広く生態系に影響を及ぼしてしまう」と指摘する。

 全長2300キロのグレートバリアリーフは、自然や科学、環境的に計り知れない価値があるだけでなく、新型コロナウイルスの流行以前は、豪経済に年間推定40億ドル(約4200億円)の観光収入をもたらしていた。

 しかし気候変動による海面水温の上昇が、サンゴ礁に悪影響を及ぼし、世界遺産の地位を奪う恐れもある。

 健康なサンゴが海面水温の変化でストレスを受けると、体内に生息する藻類が外に追い出される。これは白化現象と呼ばれ、鮮やかな色が失われることになる。

 2016年と17年に連続して大規模な白化現象が発生したため、豪政府は昨年、グレートバリアリーフの長期的な生息環境の見通しを「非常に悪い」に格下げした。

 最初に大規模な白化現象が観測されたのは1998年で、同年はそれまでの最高海面水温を記録した。しかし、海面水温気温の上昇に伴い白化現象が起きる頻度は高くなり、サンゴ礁は縮小すると同時に回復が一層難しくなった。

 長期的な海洋温暖化とそれに伴う白化現象に加え、グレートバリアリーフは1995年以降、複数のサイクロンに見舞われた。また、サンゴを食べるオニヒトデの大量発生にも2回遭っている。

 ヒューズ教授によれば、科学者らは産業革命前からの地球の平均気温上昇を2度未満に抑えるというパリ協定(Paris Agreement)の目標を各国が達成しない限り、サンゴは死に続けると予測しているという。

 同教授は「変化の過程は非常に速い。その速さにわれわれはショックを受け、驚いている。そしてこれからも、さらに大きな変化が待っている」と警鐘を鳴らした。(c)AFP/Holly ROBERTSON