【10月26日 AFP】戦争犯罪が犯された後、国や文化はどのようにして前に進むのだろうか──。

 プロジェクト「イマジン:平和についての考察(Imagine: Reflections on peace)」は、ボスニア、カンボジア、ルワンダなどの紛争地域での元特派員たちによる活動をベースに、そのロードマップを描く。焦点は「許すこと」が持つ力だ。

 展覧会や本を中心に構成されたプロジェクトは、英写真家ギャリー・ナイト(Gary Knight)氏(56)を中心に進められた。今月開催された「バイユー戦争報道特派員賞(Bayeux-Calvados)」の授賞式に出席した同氏は、「フランスや英国、米国では、ルワンダや北アイルランドなどの国から学ぶことがたくさんある」と述べる。

 自分たちの社会の分断に目を向けてほしい、とナイト氏は言う。もしジェノサイド(大量虐殺)を経験した国が前進できるなら、それは希望を与えてくれる、とAFPに語った。

 プロジェクトには、カメラマンのジャック・ピコーネ(Jack Picone)氏や記者のフィリップ・ゴーレイビッチ(Philip Gourevitch)氏を含む、ベテランの特派員20人以上が名を連ね、悲惨な紛争の後に平和を築くことの難しさをテーマに掲げている。

 ナイト氏は、過去数十年間で起きた数々の悲惨な出来事とは比較にならないとしながらも、今日の欧米社会は一体感が薄れており、「政治家が人々の間にある分断をさらに増幅させている」と警鐘を鳴らす。

■「許すことを決めた」

 ナイト氏のNPO「VIIファウンデーション(VII Foundation)」は、紛争を取材した記者らを再び同じ場所に派遣して紛争後の状況を記録した。

 1994年にルワンダで、ツチ(Tutsis)人とフツ(Hutus)人穏健派の大量殺りくを目の当たりにしたアリスさんが取材に応じた。アリスさんは80万人が命を落としたジェノサイドの後、3年間しゃべることができなくなった。

「世界が終わっていく感じがした」とアリスさんは言う。

「私の赤ちゃんは連れ去られて殺された。彼らは私の手を切り落とした。ここにも傷がある。25年たった今でも、傷跡が残っている」と述べ、やりで刺されたという肩と胴を指さした。

 だが、彼女を苦しめた張本人であるエマニュエルさんが目の前でひざまずいたとき、アリスさんは「許すことを決めた」と語る。「私たちは友人で…今は平和に暮らしている」

 アリスさんは、「自分を救いたかったから許したのです」と記者のゴーレイビッチ氏に述べ、「もし許していなければ、子どもに憎しみを引き継がせることになった」と続けた。

 動画チームがエマニュエルさんを取材した。エマニュエルさんは「殺すのは簡単です。難しいのは生き残った人々に許しを乞うことです」と、自然豊かな村で行われた撮影で語った。

 カメラマンのピコーネ氏は、ルワンダの傷がゆっくりと癒えつつあることを知ったと話した。