【10月16日 AFP】レバノン人のステンドグラス・アーティスト、マヤ・フセイニー(Maya Husseini)さん(60)は、何十年もの間、カラフルな窓ガラスをデザインする仕事に携わってきた。引退を考えていたが、8月4日に首都ベイルートの港湾地区で大爆発が発生して以来、仕事の依頼が殺到している。

 ベイルートを揺るがしたこの爆発では、190人以上が死亡し、数千人が負傷。市内の由緒ある建物も数十棟、破壊された。

 アーティストらは被災した芸術作品の修復に少しずつ取り掛かっている。フセイニーさんもその一人だ。

 ベイルート郊外にある地下室の工房でフセイニーさんが指さした先には、1975年から1990年にかけて起きた内戦後に自身が修復した19世紀の教会の窓の残骸を収めたダンボール箱があった。箱の中には、ガラスが外れてぐにゃりと曲がった金属の塊と、粉々に割れることなく残ったオレンジ色や青いガラスの破片がいくらか入っていた。

 爆発が起きる前は、ヨルダンであと一つだけ大聖堂の仕事に関わり、ステンドグラスを完成させた後は引退しようと考えていた。

「でも、今やめるわけにはいかない」とフセイニーさんは言う。

 同じく修復を始めたアーティストで、大学講師でもあるギャビー・マーマリー(Gaby Maamary)さん(58)は、爆発で破損した絵画の修復を無料で行うことにした。爆発後、若者たちが割れたガラスやがれきの山を片付けている姿を見て、美術品の保存に関する自身のスキルをベイルートの遺産を守るために役立てることにしたという。

 美術品は「気を配らないと、あっという間に失われてしまうので」とマーマリーさんは話した。(c)AFP