【10月22日 AFP】「地下神殿」の異名を持つ埼玉県春日部市の首都圏外郭放水路は、壊滅的な洪水の被害から首都圏を守っている。一方で専門家らは、気候変動の進行に伴い、洪水のリスクの高まりを指摘している。

 地上では世界最大級の地下放水路を造っている工学技術の粋はほとんど分からないが、巨大な地下構造は、米ニューヨークの自由の女神像(Statue of Liberty)がすっぽり入る深さの立て坑もあり、豪雨や台風であふれた川の水の一部を他の川に流すことで近隣地域および首都を守っている。

 1本500トンの柱が何本もそびえ立ち、サッカー場2面分の広さがあるむき出しのコンクリートの調圧水槽を支えている。

 現場責任者は、この地下放水路のおかげで、近隣河川流域で水害を受ける家屋数を約90%減らすことができたと説明した。

 100本以上の河川がある東京には、これ以外に地下調節池が10施設、地下トンネル式調節池が3施設ある。さらにいくつかの治水施設の建設が進められている。

 大阪でも、春日部の放水路に似た治水施設を3660億円かけて建設中で、完成は2044年を予定している。

 しかし、地球温暖化の影響でかつては100年に1度の規模と思われていた暴風雨が多発し、壊滅的被害をもたらしているため、専門家らは、水害へのさらなる対応が必要ではないかと警鐘を鳴らしている。(c)AFP/Shingo ITO