【10月13日 AFP】世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は12日、新型コロナウイルス対策として一部の人々が提唱している、感染拡大を容認して「集団免疫」の獲得を目指す戦略について、「非倫理的」だとして警鐘を鳴らした。

 テドロス氏はインターネット上で開いた記者会見で、「集団免疫はワクチン接種に関して使われる概念であり、ある集団がワクチン接種の閾(しきい)値に達すると特定のウイルスから保護されるというもの」と指摘。例として、麻疹(はしか)では人口の95%がワクチンを接種すれば残りの5%がウイルスから保護されると説明。ポリオではこの閾値は推定80%だとした。

 さらに「集団免疫はウイルスから人々を守ることで獲得されるもので、ウイルスに人々をさらすことで獲得されるものではない」とし、「集団免疫が感染症発生、ましてやパンデミック(世界的な大流行)に対応する上での戦略として使われたことは公衆衛生史上、一度もない」と強調。

 世界の新型ウイルス感染者が3750万人を超え、死者が100万人に達している現状では、集団免疫の自然獲得に頼ることは「科学的にも倫理的にも問題がある」と言明し、「われわれが完全に理解していない危険なウイルスを野放しにするのは非倫理的だ。選択肢にはならない」と断言した。(c)AFP