【10月12日 AFP】(写真追加)世界最大の北極遠征調査プロジェクトの調査船が12日、ドイツ北部ブレーマーハーフェン(Bremerhaven)港に帰還した。気候変動が北極圏に及ぼす影響について1年以上にわたるデータ収集を行い、持ち帰ったのは北極海が死にかけているという壊滅的な証拠と、数十年後には夏の北極海から氷が消えるという警告だ。

 独アルフレート・ウェゲナー研究所(Alfred Wegener Institute)の大型砕氷船「ポーラーシュテルン(Polarstern、北極星)」号は389日間、氷に閉ざされた北極海を移動しながら、地球温暖化の北極圏への影響に関する極めて重要なデータを収集してきた。調査団には20か国から数百人の研究者が参加した。

「北極海がどのように死につつあるのかを私たちは目撃した」。団長を務めた大気学者マルクス・レックス(Markus Rex)氏は帰還目前、AFPの取材に、「気候変動の震源地」とみなされている北極圏の海氷に地球温暖化が甚大な影響を及ぼしているのを調査団は目の当たりにしたと語った。

「その過程を、窓のすぐ外に見たし、もろい氷の上を歩いた時にも確認した」「北極点でも、侵食が激しく解けて薄くもろくなった氷を見つけた」とレックス氏は説明。北極圏で温暖化傾向が続けば、今後20~30年以内に「夏期の北極海から氷が消える」と警告した。

「北極気候研究のための学際的漂流観測(MOSAiC)」と銘打たれた今回の調査プロジェクトでは、気候変動が北極圏や世界に及ぼす影響を分析評価するため、1年以上かけて大気、海洋、海氷、生態系についてデータを収集した。

 調査団は、ポーラーシュテルン号の半径最大40キロ内の海氷の上4か所に観測所を設置。太陽が一日中昇らない極夜に海氷の下の海水を採取し、極端な条件下での海洋生態系の機能について理解を深めるため植物プランクトンとバクテリアを調べた。

 総額1億4000万ユーロ(約175億円)を投じたこのプロジェクトで、調査団は150テラバイトに及ぶデータと1000種類以上の氷のサンプルを持ち帰った。調査団は1年間にわたって100個超の変数をほぼ継続的に測定しており、これらの情報が「北極圏と気候システムを理解する上での突破口になることを期待している」とレックス氏は述べた。 (c)AFP/Yannick PASQUET