【10月12日 People’s Daily】中国において黄河は全国の水資源量のわずか2%を占めるだけだが、全国の12%の人口と15%以上の耕地がその水に依存している。流域の農業、工業、都市は水資源の効率的使用を進め、節水を図っている。

 中国水利省が推し進めているのが、農業のかんがいの技術革新だ。スプリンクラーなどを活用した散水かんがい、水肥一体化などの技術を導入し、作物栽培に必要な分だけの水を使用するよう、最適化を図っている。2019年、黄河流域のかんがい用水利用係数(水の消費割合)は0.562。1ムー(約6.7アール)あたりの水使用量は319立方メートルで、節水水準は全国平均を上回った。

 河南省(Henan)滑県では耕地を広げながら、同時に節水を実現している。昨年は黄河から1億4098万立方メートルの水を使用したが、47.2万立方メートルの節水を果たし、年間の収穫量を390トン増やした。

「水は金や銀と同じほど価値があり、手に入りにくい」。地元の大規模農家、白学傑(Bai Xuejie)さんは嘆くように話す。現在は自動散水機を導入し、効率よい水やりができるようになった。「パソコンで水量と時間を設定し、作業時間も水の使用量も節約できた」と胸を張る。

 黄河の水を枯渇させないため、流域全体の使用量を先に決定し、それぞれの省や市、県、企業、団体、農地の割り当てを後で決める方式が広がっている。

「370万立方メートル」。それは山東省(Shandong)浜州市(Binzhou)の紡績業・華紡株式会社が割り当てられた使用量だ。「水がひとたび止まれば、生産もすぐ止まる。この水は私たちの生命線だ」。同社のエネルギーシステム副チーフエンジニアの于濤(Yu Tao)さんは強調する。染色や製造など作業過程を細分化し、使用する水量を徹底管理した。「冷却水や工業水の廃水も回収して再利用もしている。節水意識から新たな技術が生まれた」。同社の水使用量は、紡績産業の平均の半分にとどまっている。

 水利省黄河水利委員会水資源管理調整局の程艶紅(Cheng Yanhong)副局長は「黄河流域用水の総量を管理し、取水を許可する審査を厳格にしている」と説明する。2019年7月から今年6月にかけ、黄河本流が流れる青海省(Qinghai)、甘粛省(Gansu)、寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)、内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)、山西省(Shanxi)、陝西省(Shaanxi)、河南省、山東省、河北省(Hebei)の9省・自治区の合計消費量は242.93億立方メートルで、年間計画基準より5.21億立方メートル少なかった。2019年の黄河流域の工業生産1万元あたり水使用量は55.4立方メートルで、継続して減少している。

 節水徹底を進めると同時に、水資源の取引も活発になろうとしている。今年4月、寧夏回族自治区で水資源取引システムが全国で初めて誕生した。

「5.4億元(約84億円)で取引成立!」。同自治区永寧県(Yongning)の取水権をめぐる競争入札で、寧東開発投資株式会社が落札した。25年間にわたり毎年2000万立方メートルの水を受け取る。寧夏回族自治区水利局水文水資源観測警報センター長の陳丹(Chen Dan)さんは「市場原理にだけ任せず、取水権取引により水資源の効率利用を進めていく」と話し、地方政府が積極的に供給と需要のマッチングを実現させている。同様の取り組みは各地で進んでおり、地域や産業を超えて水の有効活用が進んでいる。「母なる大河」の恵みを各地が共有し、人々に利益をもたらしている。(c)People's Daily/AFPBB News