【10月12日 AFP】カンボジアの農村部に立つ一軒の家の前に、頭にプラスチックの鉢をかぶり、木の枝で武装し花柄のシャツを着たかかしが立っている。縁起を担ぐ農家の住人が立てた、新型コロナウイルスを追い払うための見張り役だ。

 こうした独創的なかかしはクメール語で「ティン・モン(Ting Mong)」と呼ばれ、デング熱や不衛生な水が原因の下痢といった感染症で苦しんできた農村部でよく見られる。

 同国首都プノンペンの北東約110キロに位置するコンポンチャム(Kampong Cham)州に住む農家のソック・チャニー(Sok Chany)さん(45)は、今回、「コロナウイルスに家族が脅かされるのを防ぐためにティン・モンを立てた」と話す。チャニーさんが暮らす木造の高床式住宅の前には2体のかかしが立っている。

 もう1体のかかしは緑色の迷彩模様の服を着て、干し草を詰めた胸に木の枝をライフル銃のように掛けている。チャニーさんはAFPに「危険な災害の時や災いを避けるためにティン・モンを立てるのは、この地域で昔からやっている縁起担ぎ」と語った。

 国民の大部分が仏教を信仰しているカンボジアでは、多くの人が土地や動物、物に魂が宿ると信じており、日常生活や儀式的行事にアニミズム(精霊信仰)が深く根付いている。(c)AFP