【10月9日 AFP】(更新、写真追加)ノルウェーのノーベル賞委員会(Norwegian Nobel Committee)は9日、2020年のノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を、飢餓との闘いと紛争地域での平和活動をたたえ、国連(UN)の世界食糧計画(WFP)に授与すると発表した。

 同委員会は、WFPの「飢餓との闘い、紛争地域における平和に向けた環境の改善、さらに戦争・紛争において飢餓が武器として悪用されることを予防する活動」を受賞理由に挙げた。

 ベーリット・レイスアンデルセン(Berit Reiss-Andersen)ノーベル賞委員長は、首都オスロで開いた会見で「今年の平和賞では、飢えに苦しむ何百万人もの人々や、飢餓の危機にひんしている人々に世界の目を向けてもらいたいと思う」と述べた。

 WFPは、ヘリコプターに加え、ゾウやラクダを駆使して食料を各地に届ける「世界有数の人道支援機関」であることを誇りにしている。

 WFPの推計によると、世界の11人に1人に当たる約6億9000万人が、日々空腹のまま就寝することを余儀なくされているという。

 1961年に設立されたWFPは昨年、9700万人を支援し、88か国で150億回分の食料を配給した。これは途方もなく大きな数字のようで、実際は必要数に比べるとごくわずかでしかない。

 専門家らによると、過去30年間で改善が見られるとはいえ、現在の傾向が続けば、2030年までに飢餓を撲滅するという国連の目標達成は難しいという。

 食料難にさらされやすいのは、概して女性と子どもたちだとされる。

  発表を受けてWFPは、「光栄な瞬間」とこれを歓迎。世界の飢餓の撲滅と、戦争や紛争の終結は切り離せないものだという事実を「改めてはっきりと思い起こさせてくれた」との見方を示した。

 WFPのトムソン・フィリ(Tomson Phiri)報道官は「WFPの活動の意義の一つは、きょう、あすの食糧を届けるだけではなく、その翌日、それ以降も人々が自らを支えていけるよう、知識を提供することにある」と語った。

 さらにフィリ氏は、救援物資が届けば終わりではなく、やはり「平和が必要だ」と強調。「これらの(紛争に見舞われている)諸国には安定が必要だ、これこそが基盤となる。平和でありさえすれば、他の苦しみは少しでも和らぐ」と述べた。(c)AFP