【10月12日 AFP】米シリコンバレー(Silicon Valley)のスタートアップ企業が、新技術によるウイスキー大量生産に狙いを定めている。新たな熟成技術により、たるで長期熟成させたウイスキーに匹敵する味と色、香りを数日で再現できると豪語している。

 カリフォルニア州メンロパーク(Menlo Park)で共同創業者2人により設立された蒸留酒メーカー「ビースポークン・スピリッツ(Bespoken Spirits)」は7日、ウイスキーの熟成プロセスを加速させる新事業に260万ドル(約2億7500万円)の資金を調達したと発表した。特許出願中のこの方法なら、蒸留酒業界は年間200億ドル(約2兆円)以上のコスト削減が可能になると主張している。

 創業者の一人、スチュ・アーロン(Stu Aaron)氏は「材質工学とデータ分析を用いて、顧客の注文通りの蒸留酒をつくる。顧客は(熟成にかける)長い年月とコストの7割を節約できる」と説明。「これは加速化熟成2.0だ」と述べた。

 ビースポークンは報道発表で、米ケンタッキー州だけでバーボンなど蒸留酒910万たる以上が熟成の途上にあるが、年間2000万ガロン(約7570万リットル)近くが「無駄だらけで時間のかかる時代遅れのたる熟成プロセスのため蒸発し」失われていると指摘。

 その上で、同社の独自技術なら「たるの中で香りと色と味(ACT)が高まる際にカギとなる要素を抽出し、決定的な化学反応をコントロールする」ことで「何年もかけることなく、数日以内に数十億種類の注文レシピをつくれる」としている。

■「さびと防腐剤のにおい」

「伝統的な蒸留酒の製造プロセスは、時代遅れで不正確で予測ができず、持続可能性もなく非効率的だ」と、共同創業者のマーティン・ジャノーゼク(Martin Janousek)氏は語る。「われわれは現代科学と持続可能な技術により、木材やトースト(あぶり)、チャー(焦がし)といった(たる熟成と)同じ自然の要素を使って、熟成プロセスを新しく作り直した」

 ビースポークンによると、同社のウイスキーやバーボンはすでに店頭販売されており、受賞歴もあるという。だが、肝心の味はどうなのだろうか。

 米ウイスキー情報サイト「ウイスキーウォッシュ(WhiskeyWash.com)」の評論家ジョン・ドーバー(John Dover)氏の評価は、そこそこだ。ビースポークンのバーボンウイスキーについて「第一印象は、さびと防腐剤のにおいだった。入り口としては、とても魅力的とは言えない」と書いている。

「プラスチックの味がして、バナナブレッドの風味を少し感じる。午後のおやつにかじり付いたら、セロハン包装紙を外すのを忘れていたみたいな感じだ」

 一方、焦がしたアメリカンオークだるの香り付けをしたライウイスキーの評価には、もう少し優しい言葉が並んだ。「これを飲むと、冷えた器いっぱいのレーズン入りオートミールの中に座っているような気分になる」「ライ麦の中にオークの風味があり、舌先にシナモンの辛味を感じる」とドーバー氏は記している。(c)AFP