■若者の場合、診療の順番待ちが長引けば自傷や自殺のリスクも

 ナイジェリアと北アイルランドで育ったトランスジェンダーのアレクシス・メシダ(Alexis Meshida)さん(26)は、自身も差別と暴力を受けてきたと話す。ロンドンで「安心」して日常生活を送るために顔を女性化する手術を受ける資金を集めている。

 メシダさんは暴力を受けるリスクだけではなく、診療を受けるまでに待たされる時間が長くなれば、それだけ精神衛生上のリスクも高まるため、命が脅かされることになると指摘した。

 特に18歳未満のトランスジェンダーの多くにとって、体の性別移行は容易ではない。最初に心理カウンセリングを受けてからでないと、第2次性徴遮断薬の処方やホルモン療法は受けられないからだ。

 トランスジェンダーの若者とその家族を支援している組織「Think2Speak」の代表、リジー・ジョーダン(Lizzie Jordan)氏は、トランスジェンダーの若者たちが診療をなかなか受けられず、自傷するリスクが現実のものになっていると指摘。

「現行の制度には重大な欠陥があり、必要なケアが適時行われていない」と批判し、「もがき苦しんでいる子どもたちは、やがて自傷や自殺に走るようになる」と話した。

 あと10年も待つのは耐えられない、不安障害や抑うつなど、他の問題につながっていくとジェイさんは言う。

 クラウドファンディングの目標額8600ポンド(約117万円)のうち、これまでに集まった額は900ポンド(約12万円)を超えた(9月末現在)。

 今は、(胸の膨らみを目立たなくする)チェストバインダーを着けているが、いつか、それなしで海岸でシャツを脱いで過ごせる日が来ることを心待ちにしているという。それまでは、待つしかない。(c)AFP/Elizaveta Malykhina