【10月18日 AFP】家族で農場を経営している米バージニア州のスーザン・コルベット(Susan Corbett)さんは、副収入を得ようと産業用大麻(ヘンプ)の栽培を始めた。そのときは誰かがコルベットさんの畑の一画を見つけて、それを盗み出すとは思いもしなかった。

 でも彼らは盗んでいった。これは2018年に米国でヘンプが合法化されて以降、ヘンプ農家が体験してきた数多くの紆余(うよ)曲折や苦難の中の一つだ。現在は監視カメラ2台がヘンプを見張っている。

 ヘンプの外見とにおいは嗜好(しこう)用大麻と似ているが、大麻の使用者をハイにするテトラヒドロカンナビノール(THC)はほとんど含まれていない。

 畑には黒々と太字で「これは大麻にあらず」と書かれた「こそ泥」に警告する看板がある。「これで何をするつもりだったのでしょうね。THCなんか入っていないのに」とコルベットさんは言った。

 ヘンプは種、繊維、ストレス緩和作用のあるCBD(カンナビジオール)を含む油に需要がある。だがそれは嗜好用大麻と同じ植物の別品種だ。嗜好用大麻は連邦法で今も違法で、米国の大半の州でさまざまな規制がある。

 一方、産業用大麻は合法化されたが、この作物による収益を期待するヘンプ農家は多くの問題と直面している。市場は飽和状態にあり、栽培作業は骨が折れ、疑い深い警察を案内せねばならず、THCが制限値を超えた場合は焼却を義務付けられ、さらに泥棒までいる。

■簡単ではない

 世界最古の栽培植物の一つであるヘンプは20世紀の間、米国で栽培が禁止されていたが、2014年に研究目的での栽培が許可され、その4年後の18年には全国的に合法化された。

 ヘンプ栽培を推進する団体「ボート・ヘンプ(Vote Hemp)」によると18年以降、46州でヘンプ栽培を規制する法律が成立した。昨年のヘンプ栽培認可件数は、34州で前年比455%の伸びだった。

 栄養補助食品として、または食品に添加されて販売されているCBDの人気も高まっている。金融サービス会社、カナコード・ジェニュイティ(Canaccord Genuity)のアナリストは、2024年までにCBDの売り上げは45%増え、180億ドル(約1兆9000億円)に達すると予測している。

 ヘンプ農家は、栽培にとにかく手間がかかるという。手作業で行わなければならない刈り入れ、綿密な除虫剤の噴霧スケジュール、そして出荷前の乾燥作業などだ。

 そして厄介なのはヘンプに含まれるTHCの存在だ。栽培農家はTHCのレベルが一定量を超えないよう常に検査する必要がある。超えた場合は焼却処分しなければならない。

 同じくバージニア州の田舎でヘンプ農家を営むデビッド・ターナー(David Turner)さんによると、ヘンプ泥棒の容疑者が何人も地元警察に逮捕された。大麻だと思って吸うためか? それとも大麻だと信じて疑わない買い手に売るのか? ターナーさんには分からない。

 映像は8月に取材したもの。(c)AFP/ Chris Stein