【10月10日 AFP】韓国の彫師ドイさん(40)はハリウッド(Hollywood)の大スター、ブラッド・ピット(Brad Pitt)さんや韓国の男性アイドルグループ「EXO(エクソ)」のメンバーら有名人を顧客に持つ。だが、その繊細で緻密なデザインのタトゥーが理由で、刑務所に入る可能性がある。

 現在、ドイさんはタトゥー(入れ墨)に関するある法律の廃止運動を率いている。韓国ではかつて入れ墨は犯罪組織とほぼ完全に結びついていた。その法律には、社会から長らく疎外されてきた入れ墨の地位が反映されている。

 入れ墨自体は違法ではないが、法律上は医療行為に分類され、施術できるのは完全な資格を有する医師のみとされている。違反者は2年以上の実刑判決を受ける可能性がある。

 しかし彫師らは、近年はKポップのスターやスポーツ選手を中心に洋風のタトゥーが広まり、より主流になってきており、法律が時代遅れになっているという。

 韓国で最も有名なタトゥー・アーティストの一人、ドイさんのキャリア自体に法律の矛盾が表れている。インスタグラムで50万人近いフォロワーがいるドイさんの個性的なデザインと繊細な色使いは、国内外で知られている。

 昨年ピットさんに彫ったデザインについては守秘義務を理由に明かさなかったが、「ブラッド・ピットさんに施術して家に帰る道すがら、どんなに誇らしく感じたか、表現する言葉が見当たらない」とドイさん。

「けれど、仁川国際空港(Incheon International Airport)に着くや、かばんにしまった施術道具が見つかるのではないかと心配になる」とAFPに語った。

 ドイさんは、こうした状況によって国内に2万人余りいる彫師は、起訴や抜き打ち捜査の対象にされる可能性があり、また悪意のある顧客や仕上がりに満足しなかった顧客の脅しから身を守りにくいと訴える。

 今年初め、ドイさんは韓国初のタトゥー・アーティスト団体を設立。近く憲法裁判所(Constitutional Court)に対し、医師以外による入れ墨施術の合法化を求める方針だ。

 しかしドイさんの団体の活動が報道された後の今年7月、氏名非公表の人物による刑事告発があり、ドイさんは現在、警察の取り調べを受けている。

 取り調べを受けることは「最悪の気分」だが、「何かをしなければならない」と感じたとドイさんは語る。「そのままにしておいたところで、何も変わらない」