【10月7日 AFP】互いに相手を見る際、顔は人にとって重要な要素となるが、犬にとってはそれほどの重要性はないとする研究結果をハンガリーとメキシコの研究チームが5日、発表した。

 研究を率いたハンガリー・ブダペストのエトベス・ロラーンド大学(Eotvos Lorand University)のアッティラ・アンディクス(Attila Andics)氏は、「今回の研究で実施した脳撮像実験の結果は、顔が人やおそらくその他の霊長類にとって極めて重要な意味を持つが、あらゆる動物にとって極めて重要というわけではなく、犬などにとってもそれほど重要ではない可能性があることを示唆している」とAFPの取材で語った。

「この二つの動物種は視覚的なコミュニケーションに違いがあり、それがそれぞれ脳に反映されている」と、アンディクス氏は説明する。

 研究で、ハンガリーとメキシコを拠点とする専門家チームは、脳による視覚情報の処理について犬と人とで比較した。

 30人の人と、20匹の犬を対象に行われた実験では、犬と人の顔と後頭部を撮影した短い動画を見せ、脳スキャナーでそれぞれの反応を調べた。

 米専門誌「神経科学ジャーナル(Journal of Neuroscience)」に掲載された論文によると、人の脳では、脳神経ネットワークの大部分が、顔が映っていない動画よりも顔の映っている動画に強く反応することを示していた。また、人の映像と犬の映像とで反応の強さに差が出るのは、脳のごく一部分だけだった。

 一方、犬の脳では、顔に対してより強く反応する部位はないが、一部の部位は人の映像より犬の映像の方により強い反応を示した。

 この結果についてアンディクス氏は、「顔は人の視覚コミュニケーションにとって非常に中心的な要素だ。人は誰かに出会った際の顔の処理に特化した大規模な神経ネットワークを持っている」と説明した。

 過去に行われた研究では、犬も相手の顔に注意を払い、アイコンタクトや感情を読み取るのが得意だが、別の犬の尾や体の姿勢などのシグナルもコミュニケーションの上で重要な要素となっていると指摘されていた。(c)AFP