【10月5日 AFP】オーストラリア固有の絶滅危惧種の有袋類タスマニアデビルを、豪本土の自然に約3000年ぶりに返す取り組みが進んでいる。自然保護活動家らは5日、26匹をシドニー北方の保護区に放す「歴史的」な一歩を踏み出したと発表した。

 自然保護団体「オージー・アーク(Aussie Ark)」のティム・フォークナー(Tim Faulkner)代表によると、同団体をはじめ複数の保護団体でつくるグループは今年7月と9月に、シドニーから車で3時間半のバーリントントップス国立公園(Barrington Tops National Park)内にある広さ400ヘクタールの保護区にタスマニアデビルを放したという。

 フォークナー氏はこのプロジェクトについて、米イエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)で1990年代に実施されたオオカミ再導入計画の成功にならったものだと説明。16年間にわたる活動で、豪本土最大のタスマニアデビル繁殖プログラムの立ち上げなどを経て目的を達成できたのは「信じ難く、夢のよう」だと語った。

 タスマニアデビルは黒や茶色の被毛を持つ肉食哺乳類で、体重は最大8キロほど。他の豪固有種を捕食したり、死骸を食べたりする。どう猛な動物として知られるが、豪政府の環境当局によれば人間や家畜を襲うことはない。ただ、攻撃されれば反撃し、相手に重傷を与えることもあるという。

 野生のタスマニアデビルは、豪本土では野生犬ディンゴに襲われるなどして約3000年前に絶滅したとされる。豪南部タスマニア(Tasmania)島には1990年代中頃まで15万匹ほどが生息していたとみられるが、顔面に腫瘍ができる謎の伝染病が流行し個体数が激減。島内に今も生息する野生の個体は推計2万5000匹以下まで減っており、絶滅危惧種に指定されている。

 映像は9月10日撮影、10月5日提供。(c)AFP/Holly ROBERTSON