【10月2日 AFP】米国の女性が、鼻腔(びこう)粘膜を採取する新型コロナウイルス感染症検査を受けた際、鼻の奥に差し込んだ綿棒の先が脳膜を突き破り、鼻から髄液が漏出する事例が起きていたことが、医学誌に1日に掲載された医師らの報告で明らかになった。女性はこれにより、命に関わる感染症リスクにさらされたという。

 この40代の女性には、医師の診断を受けていなかったまれな症状があった上に、受けたウイルス検査が適切に行われなかった恐れがある。通常起こりにくい出来事が重なったと考えられ、鼻腔検体採取検査のリスクが非常に低いことに変わりはない。

 米国医師会雑誌(JAMA)系の耳鼻咽喉科疾患および頭頸(けい)部外科手術の専門誌に掲載された論文を執筆したジャレット・ウォルシュ(Jarrett Walsh)氏は、アイオワ大学病院(University of Iowa Hospital)の医師。

 ウォルシュ氏によると、女性はヘルニア手術の前にウイルス検査を受け、その後片方の鼻孔から透明な液体が出てくることに気付いたという。

 さらに頭痛や嘔吐(おうと)、頸部硬直、光線過敏などの症状を呈し、ウォルシュ氏の病院に入院した。

 実は女性は数年前に、頭蓋内圧高進症、つまり脳を保護したり栄養を与えたりする脳脊髄液の圧力が高くなり過ぎる病気の治療を受けていた。

 医師らはシャント手術で髄液の一部を排出し、症状は解消された。ただこれにより、頭蓋底の穴から、脳膜が鼻の方に垂れ下がり傷つきやすい状態になる脳ヘルニアを起こしていたという。

 これについても女性は手術を受けて回復していたものの、その後脳膜に炎症が生じていたものと、ウォルシュ氏はみている。

 ウォルシュ氏は、これは非常にまれなケースではあるとはいえ、新型コロナウイルスの大流行が終わるまでにさらに数億人が検査を受ける可能性があることを考慮すると、検査には高度な訓練が必要であることを改めて認識させられる事例になったとしている。

 同氏は、過去に鼻や頭部の大掛かりな手術を受けたことのある人がコロナ検査を受ける場合、可能なら口内検査の選択を検討するよう勧めている。(c)AFP/Issam AHMED