【10月3日 CNS】中国・甘粛省(Gansu)蘭州市(Lanzhou)が市内のタクシー運転手に対し、「入れ墨禁止令」とも言うべき通達を発表し、インターネット上で多くの議論を呼んでいる。

 蘭州市交通運輸委員会は通達で「タクシーは公共サービス産業であり、運転手の入れ墨は女性や子どもらの乗客に心理的な不快感を引き起こす可能性がある」と指摘し、「運転手は、腕や首など体がむき出しとなる部分に大きな入れ墨をしてはならない」と求めている。すでに入れ墨をしている運転手は、入れ墨を隠すか除去する必要に迫られることになる。

 中国では、タクシー運転手がワンポイントの入れ墨を入れていることは珍しくない。蘭州市に住む女性の李さんは取材に対し、「大男の運転手の腕に竜や虎などの入れ墨があると、たしかに威圧感がある」と話す。

 3258人が回答したインターネット調査では、33%の人が入れ墨のある運転手のタクシーに「乗りたくない」と回答。「乗ってもかまわない」の27%を上回った。あとは「考えたことがない」が35%、「その他」が5%だった。

 一方、あるタクシー運転手はネットの掲示板で「これは入れ墨をしている人への雇用差別だ。家族を養う必要があるのに、若い頃の入れ墨のために仕事を失いたくない」と訴えている。

「入れ墨禁止令」は蘭州市が最初ではない。吉林省(Jilin)長春市(Changchun)は昨年9月、運転サービス向上キャンペーンで「入れ墨のあるドライバーは露出してはならない」と明記。乗客が問題を見つけた場合、電話で通報できるようにした。

 一方、甘粛省心理カウンセラー学会の莫興邦(Mo Xingbang)会長は「入れ墨は個人的な趣味にすぎない。入れ墨自体に善悪はなく、個人の資質とも関係ない」と指摘。「自己表現や愛の証、もしくは体の傷を隠すため入れ墨を入れる人もいる」と話す。入れ墨に芸術性を感じる乗客もいるだろうし、そもそも自己表現は互いに尊重されるべきだと訴える。

 莫氏は同時に、「入れ墨を嫌いな人が視覚的および心理的な不快感を引き起こす可能性は当然ある」とし、公共サービスに携わる人々は職場の規定と個人の行動に折り合いを付け、市民の心理に受け入れられる配慮が必要としている。(c)CNS/JCM/AFPBB News