【解説】5Gによる健康被害は本当にあるのか?
このニュースをシェア
■生物学的あるいは健康への影響
電波が人に及ぼす主な影響は体組織の加熱だ。
WHOのウェブサイトには、「現在の技術で生じる高周波への暴露では、人体における温度上昇は無視できる程度」とあり、また「全体的な(電波への)暴露が国際基準を下回っていれば、公衆衛生への影響は特に懸念されない」とも記している。
しかし、ANSESの専門家オリビエ・メルケル(Olivier Merckel)氏によると、「(一部の)研究では、睡眠やストレスといったある特定の項目で、生物学的な影響が指摘されている」と主張する。
ただ、生物が環境に反応を示すにとどまる生物学的影響と、そこに健康被害があると断定することの間には大きな違いがある。健康被害の有無は、暴露に対する累積的影響に人体が適応できるかどうかを観察した後で判断されることになる。
■5Gへの懸念?
5Gで使われる高周波の情報に乏しいということは、それがANSESなどの研究機関の調査対象となっていることを意味する。
5G通信は現在、Wi-Fi機器に近い周波数帯を使用しているが、今後はさらに高い周波数が使われることになるだろう。そして周波数が高くなるにつれ電波は体を通りにくくなり、その影響は主に皮膚と目に限られることとなる。
メルケル氏は「これは、潜在的な健康への影響について異なる問題を提起する」と指摘する。
ANSESは2012年、空港に設置された同様の周波数を使用するボディースキャナーの安全性について、健康被害をもたらすものではないとの評価を下している。
しかし、仮に周波数が近かったとしても、ボディースキャナーと5Gとではその使われ方が異なる。5G通信の運用では、サービス使用者も非使用者もそれぞれ異なる量ではあるが、ほぼ恒常的に高周波にさらされることになるのだ。(c)AFP/Paul RICARD