【11月18日 AFP】その小さな村は、カフェレストランや美容院、小さなスーパーマーケット、図書館があり、フランスのごく一般的な村に見える。住民たちはテラスでコーヒーを飲みながらおしゃべりに興じたり、公園やジムに集まったりしながら、その後、それぞれ帰途に就く。しかし、ごく一般的とは言えない点が一つある。平均年齢79歳の住民たちは、全員が同じ病気にかかっている。アルツハイマー病だ。

 温泉地で有名なフランス南西部の町ダクス(Dax)で6月に開設した「ランド・アルツハイマー村(Village Landais Alzheimer)」では、いまだに治療法がなく、記憶が徐々に失われていくこの病気になった120人が暮らしている。このうち10人は、60歳未満の認知症患者向けの枠で、最年少の住民は40歳だ。

 村には四つの「区」があり、8人前後が入居しているホームが4軒ずつある。入居者一人ずつに医療介護者とボランティアがつき(全体で240人)、日常のさまざまなことが一人でできなくなった場合に手伝う。

 ただし、ここは介護施設ではない。スタッフは白衣を着ておらず、入居者には可能な限り各自のライフスタイルを追求する自由が与えられている。

 アシスタントのオレリー・ブスカリ(Aurelie Bouscary)さんはAFPに対し、「入居者は個室で暮らし、各自のペースで生活する。朝6時に起きる人がいても、他の人の眠りが妨げられることはない」と説明した。

 村はボルドー(Bordeaux)から電車でほんの1時間、パリからは3時間半の場所にあり、入居待ちのリストは長い。

 オランダの同様のプロジェクトにヒントを得て始まったダクスの試みには、日本やイタリアの公衆衛生の専門家も注目している。高齢化が進むこうした国々でも、(加齢に伴って心身の活力が低下した状態を指す)フレイルの予防・治療をより人間らしい形で行う新しいケアモデルを模索しているためだ。