■国内の闇市場の主要な顧客は軍の将校や共産党幹部

 ロシアの国営メディアの報道によると、人身売買への懸念が広がり、ロシアとウクライナの警察はアパートの「赤ん坊部屋」の強制捜査を開始した。こうした部屋では、法的書類を有していない赤ん坊5〜6人をベビーシッター1人で世話している。

 サンクトペテルブルクにある代理出産仲介業の中国担当者で、リンさんに協力したドミトリー・シチュコ(Dmitriy Sitzko)氏は、「警察が踏み込んだときに身元書類のない中国人の乳児数人が赤の他人と一緒に住んでいると、移植用臓器の摘出用に赤ん坊を売っているかのような印象を与える」と話した。

 リンさんは仲介業者に、赤ん坊を無料で世話してくれる国営の児童養護施設を見つけてもらった。

 だが、シチュコ氏によると、ロシアの一部の仲介業者は、月額7000元(約11万円)から2万1000元(約33万円)を実親に請求しているという。

 一方、世界的な海外渡航制限で外国での代理出産が滞っていることを受け、国内の闇市場を頼る人々もいる。

 中国南部の広東(Guangdong)省広州(Guangzhou)の仲介業者はAFPに、「(胚の)移植と出産が成功」した際の費用は60万元(約940万円)だと明かした。

「20万元(約310万円)追加すると性別を選ぶことができ、さらに20万元払えば龍鳳(りゅうほう)胎(男女の双子のこと)も選べる」と、オプションについて説明した。

 中国国内で主に非合法な仲介サービスを利用しているのは、軍の将校や共産党幹部、判事など、機密に関わる職にあるため海外に渡航できない人々だ。当局とつながりがあるおかげで、こうした闇業者が罰せられることはない。

 子どもを持つために弁護士のキャリアを断念したリンさんは、不安が大き過ぎて中国の闇市場には頼れなかったと語った。だが新型ウイルスのパンデミックが起きた今、その選択を後悔している。「私がリスクを負っていたら、今ごろは自分の赤ちゃんを抱いていたのに」 (c)AFP/Helen ROXBURGH / Poornima WEERASEKARA in Colombo / Marina KORENEVA in Saint Petersburg