■ロシアが国境封鎖した後、息子が誕生

 だが、新型ウイルスの感染が世界中に広がる中、計画は「悪夢」と化した。今年6月にリンさんの息子がロシア第2の都市サンクトペテルブルク(St. Petersburg)で生まれたものの、その3か月前にロシアが新型ウイルスの拡大防止策として中国との国境を封鎖したのだ。

 リンさんは、代理出産業者から送られてくる写真とビデオで息子の断片的な姿を眺めることしかできない。

 AFPは中国人の実親に子どもを引き渡す救済策について、中国外務省と在中国ロシア大使館に問い合わせたが、回答は得られていない。

 だが、先月22日、多くの赤ん坊が立ち往生しているサンクトペテルブルクで子どもの権利擁護を担当している当局は、「中国人の親たちがロシアに来て子どもを引き取れるように、ビザの発給と、北京からの人道的な航空便の運航を検討している」との考えを示した。

 代理出産で生まれて他国で引き取りを待つ中国人の赤ん坊が何人いるのか、公式の統計はない。

 代理出産サービスを提供しているウクライナのバイオテックスコム(BioTexCom)が6月に公開したビデオでは、ホテルの一室に多数のベビーベッドが並べられており、この危機の大きさをうかがい知ることができる。同社の広報担当者によると、その赤ん坊46人の半数近くの実親は中国人だ。

 ウクライナ当局はその後、国境封鎖中であっても、赤ん坊の引き取りを求める実親に特別許可を出す措置を取った。

 だが、それだけでは不十分だと、ウクライナの首都キエフで5月に息子が誕生したリー・ミンシャ(Li Mingxia)さんは言う。

 飛行機の便が少なく、新型ウイルス対策としての隔離義務もあるため、親子の対面は11月下旬まで果たせそうにない。「息子の人生の最初の6か月を一緒に過ごせないなんて」とリーさん。「その時間は取り戻せない」