【10月18日 AFP】チェリー・リン(Cherry Lin)さん(38)は、せつなそうにベビー用ロンパースをなで、まだ見ぬ息子にはサイズがもう小さ過ぎるのではないかと心配していた。新型コロナウイルスの感染拡大で国境封鎖を余儀なくされた中国には、国外で代理出産サービスを介して誕生したわが子にいまだ会えない母親が大勢いる。

 2016年に一人っ子政策が廃止された中国では、所得が増え、不妊に悩むカップルが息子を欲しがるケースが増加。国内では、貧困女性が食い物にされているとの懸念から、商業的または利他的なものも含め、あらゆる代理出産が2001年に禁止されたが、3万5000ドル(約370万円)から7万5000ドル(約790万円)を支払えば、自分たちの赤ん坊を出産してくれる女性をラオスやロシア、ウクライナ、ジョージア、米国などで見つけることができる。

 しかし、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、代理出産サービスは混乱。国境が封鎖され、空路は途絶え、査証(ビザ)の発給は停止され、生物学上の中国人の両親の引き取りを待つ新生児や乳児が多数、国外で足止めされたままになっている。

 ロシアやウクライナの代理出産の仲介業者によると、引き取りが滞るにつれて、児童養護施設やアパートなどに何十人もの新生児を収容した「赤ん坊部屋」が見つかっている。

 四川(Sichuan)省成都(Chengdu)からAFPの取材に応じた弁護士のリンさんは、「私の子が養護施設で足止めされているかと思うと、夜も眠れない」と語った。

 リンさんは何度か流産を繰り返した後、代理出産に踏み切り、昨年、夫婦で体外受精(IVF)を行うためにロシアに渡航し、代理出産の仲介業者と契約を結んだ。