【10月1日 AFP】アルメニアとアゼルバイジャンが領有権を争うナゴルノカラバフ(Nagorno-Karabakh)で起きた軍事衝突について、ロシア外務省は9月30日、シリアとリビアの武装勢力が戦闘に参加していると発表し、「深い懸念」を表明した。

 アルメニア系住民が多数を占めるナゴルノカラバフは1990年代初め、アゼルバイジャンからの独立を宣言。以後帰属をめぐり争いが続いている。

 4日目に突入した今回の衝突では、民間人を含む100人以上が死亡した。アルメニアとアゼルバイジャン両国は停戦に向けた協議を求める国際社会の呼び掛けを拒絶しており、地域大国のトルコやロシアを巻き込む全面紛争に発展する恐れが出ている。

 アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ(Ilham Aliyev)大統領は負傷兵を見舞った際、アルメニア兵士らがナゴルノカラバフから完全に撤退するまで戦闘を継続すると言明。「アルメニア政府がこの要求に応えれば、戦いと流血の惨事は終結し、地域に平和が築かれるだろう」と語った。

 一方のアルメニア国防省は30日、アゼルバイジャンとの国境付近でトルコの航空機が「挑発的飛行」を行い、アルメニアの領空を侵犯したと主張。アルメニアはこの前日、自国軍機1機がトルコの戦闘機により撃墜されたと主張していたが、トルコとアゼルバイジャンはこの主張を否定している。

 トルコについてはさらに、アゼルバイジャン側を支援するため、協力関係にあるシリアの武装勢力を現地に派遣したとの疑惑も浮上している。ロシア外務省は「シリアとリビアなどからの不法武装勢力の戦闘員らが、戦闘に直接参加するためにナゴルノカラバフの紛争地帯に展開されている」と発表。「深い懸念」を表明したが、関与した国の名指しや非難は避けた。

 アルメニアと軍事協定を結ぶ一方、アゼルバイジャンとも良好な関係を維持しているロシアはこれまで繰り返し停戦を呼び掛け、交渉の仲介も申し出ているが、アルメニアのニコル・パシニャン(Nikol Pashinyan)首相は交戦が続く中での協議は不可能だと表明している。

 週末から続く衝突は鎮静化の様子を見せておらず、30日には両国で新たな民間人死者が報告された。アルメニア側は、兵士81人の死亡を発表。民間人死者はアルメニアが8人、アゼルバイジャンが14人の計22人となっている。

 アゼルバイジャン国防省は30日、衝突が発生して以来、同国軍がカラバフの分離派勢力2300人を殺害したと主張した。(c)AFP