【9月30日 AFP】米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領(74)と民主党候補ジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領(77)の第1回テレビ討論会が29日、中西部オハイオ州クリーブランド(Cleveland)で行われた。最高裁判事の指名や新型コロナウイルス、医療制度といったテーマをめぐり、大統領としての適正や信頼性について互いが激しく応酬する展開となった。

 討論は開始数分で全面的な非難合戦かつ個人攻撃へと発展し、バイデン氏は「彼(トランプ氏)がこれまで言っていることは、すべて単なるうそだ。私は彼のうそを指摘するためにここにいるのではない。彼がうそつきだということは皆知っている」と発言。

 また討論途中、トランプ氏に攻撃的な口調で「ちょっと黙ってくれるか?」「このピエロの話に割り込むのは大変だ」と述べる場面もあった。

 世論調査で優勢とされるバイデン氏は、世界最多の20万人超の死者が出ている新型コロナウイルスについて、トランプ氏の責任だと真っ向から主張した。

 バイデン氏は視聴者に向けて「いったいあなたたちのうち何人が、新型コロナウイルスで誰かを亡くし、今朝起きて空の椅子がある食卓に着くことになったのでしょうか」と問い掛けた。

 また、トランプ氏の過去の失言をあげつらい、「あなたが漂白剤を腕に注射すれば、片が付くかもしれない」と言い放った。

 トランプ氏は漂白剤の件は冗談だったと反論。即座にバラク・オバマ(Barack Obama)前政権時代の副大統領としてのバイデン氏の実績について攻撃し、学歴にも疑問を投げ掛けた。

 トランプ氏は「私の前で利口という言葉を決して使わないことだ。その言葉を決して使わないことだ。ジョー、あなたに利口なところなど一つもない」と述べた。

 そして「極左」がバイデン氏を「意のままに操っている」と非難し、さらにはバイデン氏が感染予防にマスク着用を重視していることも攻撃した。

 トランプ氏は「私は必要があると思ったらマスクを着ける」「彼みたいには着けない。顔を見るたび、彼はマスクをしている」と述べた。

 また、バイデン氏の息子の汚職疑惑を持ち出す場面も見られた。

 一方、バイデン氏はトランプ氏をロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の「子犬」だとやゆした。

 その後、2人は討論会の司会を務めたFoxニュース(Fox News)のクリス・ウォレス(Chris Wallace)氏から、投票日の11月3日に確実な結果が判明しなかった場合、有権者に平静を呼び掛け、勝利宣言を控えると約束するかと尋ねられた。

 バイデン氏は「約束する」と答えたが、トランプ氏は、もし「何万もの票が操作された」ことが分かれば結果を「受け入れるわけにはいかない」と述べ、約束しなかった。

■納税問題

 今週、トランプ氏は何年にもわたり連邦所得税をほとんど納めていなかったと報じられたが、討論会では「数百万ドル」納税したと主張。一方、バイデン氏は討論会の数時間前に自身の納税申告書を公表し、これまで公開を拒否しているトランプ氏にも公表を強く迫った。

■最高裁判事の指名

 大統領選前に最高裁判事を指名したことについて、トランプ氏は「分かりやすく説明しよう。われわれは(前回の)大統領選で勝利した。選挙は影響をもたらす」と述べた。

 また「民主党も同じことをしないわけがない。違いがあるとすれば、より早く実行することだ」と主張した。

 バイデン氏はこれに対し、投票はすでに始まっており、国民には最高裁判事について口を出す権利があるはずだと反論。加えて、新たに指名された保守派のエイミー・コニー・バレット(Amy Coney Barrett)氏が妊娠中絶の権利の廃止に票を投じるのではないかと、リベラル派が危惧しているとの見解も示した。(c)AFP/Saul Loeb with Sebastian Smith and Shaun Tandon in Washington