【9月30日 AFP】イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は29日、国連(UN)総会の演説で、レバノンの首都ベイルートの国際空港にも近い「ガソリンスタンド」のすぐ横にイスラム教シーア派(Shiite)政党・武装組織ヒズボラ(Hezbollah)の武器工場があると主張した。だが、ヒズボラはこの主張を即刻否定し、報道陣に該当する場所を公開した。

 エルサレム(Jerusalem)からビデオ演説を行ったネタニヤフ氏は、ヒズボラが拠点としているベイルート南郊ジュナー(Jnah)に「秘密の武器庫」があるとして地図や画像を示した。

 精密誘導ミサイルの工場と疑われたこの建物は、「数メートル離れたガソリンスタンド」と約50メートル離れた「ガス会社」の建物に挟まれる形で存在し、ネタニヤフ氏はもしも爆発すれば、8月にベイルートの港湾地区で190人以上が死亡、数千人が負傷した大規模爆発のような「新たな悲劇が起きかねない」と警告した。

 イスラエルが示した画像は調理用ガスボンベの倉庫のようで、グーグルマップ(Google Maps)で検索すると近くには複数のガソリンスタンドがある。

 だが、ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ(Hassan Nasrallah)師もテレビ演説で、ネタニヤフ氏はうそをついていると非難。「われわれはベイルートの港にも、ガソリンスタンドの近くにもミサイルを置いていない」と述べ、指摘されたジュナーの施設の内部を報道陣に公開すると宣言した。

 それから1時間とたたずに問題の場所で数十人を招いた報道陣向けのツアーが行われ、AFPのフォトグラファーも参加。2階建ての倉庫の内部に重機や複数の大型燃料タンクが置かれているのを確認した。従業員の説明によると、タンクはその倉庫で製造されたものだという。

 ヒズボラの広報担当モハマド・アフィフ(Mohammad Afif)氏は、「普通の工場だ」と説明。「敵(イスラエル)が繰り返しているわれわれに対する告発はすべて虚偽にすぎない」と語った。

 報道陣が倉庫を見学する中、ヒズボラの支持者らが現れ、ナスララ師をたたえる言葉や「私たちがあなたのミサイルだ!」といったスローガンを叫んでいた。(c)AFP