【9月28日 People’s Daily】84歳の鍾南山(Zhong Nanshan)氏は現在、中国広州医科大学(Guangzhou Medical University)付属第1医院国家呼吸器系統疾病臨床医学研究センター主任。医療、教育に従事して60年。鍾氏は「人民大衆の健康と命を守ることこそ、私たち医者の使命」と語る。

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 2003年初め、重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生、情勢は緊迫した。鍾氏は専門知識と豊富な経験に基づき、「SARSの原因は典型的なクラミジア」という見方を否定、これにより治療法の制定によりどころを提供した。
 
 思い切ってこのような判断を下したのも、鍾氏が患者一人一人の口の中を調べたためだ。ある友人が声をひそめて「君は判断ミスが怖くないのか。少しでも間違いがあれば、中国工程院院士の名誉にキズがつくぞ」と警告した。これに対して鍾氏は「科学は実事求是(事実に基づいて真理を求める)だ。保身を図ってはいけない。保身を図れば、患者が害を受ける」と静かに言った。

 SARSとの闘いでは鍾氏とその研究チームは日夜、難題に取り組み、有効な治療方法を短期間で探し当てた。これにより致死率を下げ、治癒率を上げるうえで傑出した貢献をした。
 
 今年1月18日、鍾氏が高速鉄道で武漢(Wuhan)に向かう1枚の写真がインターネット利用者を感動させた。鍾氏は疲れた表情で目を閉じていた。その前には読み終わったばかりの文書があった。
 
 2日後の20日、国家衛生健康委員会の高級専門家チームのトップとして鍾氏は人々に対し、新型コロナウイルス感染症は「人から人へ感染する」と告げた。このあと鍾氏とそのチームは寸暇を惜しんで治療、研究にあたった。
 
 鍾氏は世界の新型コロナ対策にも貢献した。米国やフランス、ドイツ、イタリア、インド、スペイン、シンガポール、日本など13か国から来た専門家と交流、中国の経験を伝え、国際協力を繰り広げた。
 
 鍾氏は医者だが、単なる医者ではない。公共衛生上の突発事件に直面すると、院士としての責任感と戦士の勇猛さで、何も恐れずに突撃する。
 
 今でも鍾氏は毎週水曜午前には病院内を回診し、木曜午後は外来患者を診察している。周囲の医療従事者によると、鍾氏は冬には手で聴診器を温め、そのあとで聴診器を患者にあてる。患者の年齢、病状にかかわりなく、どの患者にも同じように対応しているという。

 医師の仁愛の心は往々にして、ささいな言動に表れる。「これほどのお年で、疲れませんか」との問いに対しては、鍾氏はいつも「病気を治して人を救う。疲れなんか感じませんよ」と笑顔で答える。(c)People's Daily/AFPBB News