【9月26日 AFP】米国は今後10年以内に再び人類を月へと送る計画を進めているが、未来の宇宙飛行士が直面する最大の危険の一つが、健康に長期的な影響を及ぼす可能性のある宇宙放射線だ。白内障やがん、神経変性疾患など、さまざまな病気を引き起こす恐れがあると指摘されている。

 1960年代から1970年代にかけてのアポロ(Apollo)計画のミッションでは、数日間であれば人間が月面で過ごしても安全であることは証明されたが、宇宙飛行士がどれくらい月に滞在できるのかを計算するのに必要な日々の放射線量を、米航空宇宙局(NASA)は測定していなかった。

 だが、この謎は25日、中国・ドイツ合同研究チームが科学誌「サイエンス・アドバンシス(Science Advances)」に掲載した、中国の月探査機「嫦娥(Chang'e)4号」が2019年に実施した実験の結果によって明らかになった。

 論文の共同執筆者で、独キール大学(University of Kiel)の天体物理学者であるロバート・ウィマーシュバイングルーバー(Robert Wimmer-Schweingruber)氏は「月面の放射線量は、国際宇宙ステーション(ISS)内よりも2~3倍高い」と話す。

 月への往復には約2週間かかるため、その分の被ばく量も考慮すると「月面に滞在できるのはおよそ2か月が限度」だという。

 放射線量は、ヒト組織が吸収する量を数値化した単位「シーベルト」で表される。

 研究チームによると、月面での被ばく量は1日当たり1369マイクロシーベルトで、ISS乗組員の1日当たりの被ばく量よりも約2.6倍高かった。

 この違いは、部分的にではあるが、ISSが地球の「磁気の泡」で守られているからだ。これは磁気圏とも呼ばれ、宇宙放射線の大半を防御してくれる。

 また、ウィマーシュバイングルーバー氏によると「月面で測定された放射線量は、地球の表面よりも約200倍高く、米ニューヨーク発・独フランクフルト行きの便よりも5~10倍高い」という。

 ただ、もし2~3か月を超えて月面に滞在したい場合、対処法が一つある。住居を建設し、その表面を厚さ80センチの月面の土壌で覆うことにより、放射線の被ばくから身を守ることができるという。(c)AFP