【9月29日 Xinhua News】中国甘粛省(Gansu)慶陽市(Qingyang)の北石窟寺には、黄色砂岩に彫られた石窟群がある。中国の中小石窟の典型とされるが、造営から1500年以上がたち、雨水の浸透や風化・浸食が進み、国が対策に取り組んでいる。

 秋雨の中、取材に訪れると、北石窟寺文物保護研究所の呉正科(Wu Zhengke)所長が傘を差しながら各石窟を回り、落砂を量るため仏像の前に置かれたステンレス製の容器を確認していた。「石窟保護の基礎データとするため、壁面の含水量や風化の程度、害虫、落砂量を定期的に調べている」と説明してくれた。

 石像頭部を覆うコケ、風化してぼやけた顔、失われた手足…。同寺では千年の石像が「生存」の危機に直面している。

 北石窟寺は、南北朝時代の北魏の永平2年(509年)に造営が始まり、その後の西魏や北周、隋、唐の各王朝でも拡張された。現在は大小296の洞窟と龕(がん、仏像を納めるために彫られた岩壁のくぼみ)に仏像2126体が残る。

 呉氏によると、砂岩質の文化財の風化防止は世界的な難題だという。特に同寺は地下水が豊富な地盤の上にあり、降雨量も多いことから、石窟の保護で大きな課題を抱えている。

 晩唐期に開削された267号窟に入ると、長年の雨風の浸食により全体がコケに覆われ、顔の輪郭もはっきりしない仏像が目にとどまった。砂岩に含まれる可溶性塩類が、浸透した雨水の蒸発後に表面に浮き出て白い結晶となっている。「ひどい時には仏像の割れ目から水が流れでることもある」と呉氏は語る。

 一部の石窟では風化により仏像の顔が固まりで落下していた。呉氏は「効果的な措置を取らなければ、来年には変わり果てた姿になってしまう」と風化の激しい仏像を指し、危機感を募らせる。

 同寺はここ数年、甘粛省の文化財保護活動の重点となっている。2017年には石窟の調査と管理、保護を強化するため、莫高窟(ばっこうくつ)で有名な敦煌研究院が同寺の管理を行うことになった。同研究院は18年、砂岩石窟の風化防止に関する研究に着手。5年間で同寺の砂岩文化財の損傷メカニズムの解明や風化・脱落保護技術の開発などを進めるとしている。

 呉氏は、現在の保護活動を道半ばとしつつも「整備された監視・警報システムを構築し、石窟の修復・保護の研究を高めていく。データを集めて規則性を見いだし、緊急保護から緊急性と予防性を兼ね備えた保護への移行を一歩一歩実現させていく」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News