【9月26日 AFP】2008年に世界で初めてHIV(エイズウイルス)感染から完治し、「ベルリンの患者」として知られた米国人のティモシー・レイ・ブラウン(Timothy Ray Brown)さん(54)が、末期がんを患っていることが分かった。パートナーのティム・ヘフゲン(Tim Hoeffgen)さんが、活動家でライターのマーク・キング(Mark King)氏に明らかにした。

 22日にブラウンさんについてのブログ記事を書いたキング氏はAFPに対し、ブラウンさんとヘフゲンさんのカップルと19日に電話で話したと述べた。ブラウンさんは、米カリフォルニア州パームスプリングズ(Palm Springs)の自宅でホスピスケアを受けているという。

 ブラウンさんは独ベルリンに留学していた1995年、HIVに感染していることが判明。さらに2006年には、血液と骨髄に影響を及ぼす白血病であると診断された。

 白血病を治療するため、独ベルリン自由大学(Free University of Berlin)の主治医は、非常にまれなケモカイン受容体CCR5変異体を持つドナーの骨髄移植手術を行った。CCR5変異体はHIVへの自然耐性を与えることから、白血病とHIVの両方の治療につながる可能性が期待された。

 痛みと危険を伴う2回の手術は成功。ブラウンさんは2008年、HIV感染と白血病の両方の治癒が認められた。当初は匿名性を保つため、医学会では「ベルリンの患者」と呼ばれていた。

 この2年後、ブラウンさんは沈黙を破ることを決意。名前を公表して講演やインタビューに臨み、自らの基金を立ち上げた。

 昨年には、英ロンドンの男性が同様の治療法でHIV感染から完治した2人目の患者となったとする論文が発表された。当初「ロンドンの患者」と呼ばれていた男性は、その後、身元を公表し、アダム・カスティエホ(Adam Castillejo)さんであることが分かった。(c)AFP