【9月26日 東方新報】1978年に改革開放政策が始まって以来、紆余(うよ)曲折を経ながら経済成長を続けてきた中国。その歴史には、「海賊版やコピー商品の横行」という問題も常につきまとってきた。世界経済での存在感が高まるとともに「パクリ大国」との批判も受けてきたが、近年は知的財産権保護を強化する動きが進んでいる。

 中国が2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟して以降、中国に進出した外資企業のハイテク製品を含めて工業製品の輸出が急増し、「世界の工場」と呼ばれるようになった。同時に、この時期から「パクリ」のイメージも広まるようになった。

 当時、北京や上海で国際モーターショーが開かれると、話題になったのが、日本や欧米の自動車に酷似した中国の「国産新車」が登場することだった。北京市中心部・長安街沿いにあるビル「秀水市場」は、建物が丸ごとコピー商品売り場で、ロレックス(Rolex)、シャネル(Chanel)、エルメス(Hermes)、ナイキ(Nike)、ポロ(Polo)などのコピー商品が本物の数十分の一から数百分の一の値段で販売されていた。コピーと言っても、海外企業のライセンス契約を受けている中国の工場が商品を余分に製造して横流ししている場合もあり、中国駐在の外国人の中でも「中国でモノを買うなら、海外ブランドのコピー商品が、一番コスパがいい」と「愛用」している人も少なくなかった。

 2007年には、米マイクロソフト(Microsoft)が新しいパソコン基本ソフト(OS)「ウィンドウズビスタ(Windows Vista)」を販売する1か月前から海賊版が「先行販売」され、本物の200分の1の10元(約154円)で売られていた。海外映画・音楽の海賊版DVDだけを取り扱う店もあり、日本にも存在しない「宮崎駿(Hayao Miyazaki)DVD全集」「浜崎あゆみ(Ayumi Hamasaki)CD全集」が豪華な特製パッケージに入れられて堂々と販売されていた。電子製品のコピーでも本物にない「お得機能」がつけてあるなど、広く見れば海賊版市場が中国の技術力の「底上げ」を図っていた面もある。

 もちろん、中国当局も当時から海賊版の摘発を繰り返していた。押収した日本のアニメやハリウッド映画、韓国ドラマの海賊版DVD数十万枚を、マスコミの前で、粉砕機で破壊するパフォーマンスもしていた。ただ、コピー商品を製造・販売する側が圧倒的に多く、摘発が追いつかないのが実情だった。

 2010年代に入ると、露骨なコピー商品は街角から姿を消した。米国など先進国から「知的財産権の侵害」という批判や企業訴訟が相次いだことや、先端技術を開発する中国企業が次々と登場してきたことが背景にある。今や5G基地局の数が世界一となった通信技術大手の華為技術(ファーウェイ、Huawei)、ドローン最大手の大疆創新科技(DJI)、電子商取引の阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)…。世界知的所有権機関(WIPO)が今年4月に発表したリポートによると、中国がWIPOの特許協力条約(PCT)システムに基づいて申請した国際特許出願件数は5万8990件に達し、米国を抜きトップとなった。

 中国政府は2016年に「知的財産権保護の強化に関する意見」を発表するなど、知的財産権の保護の取り組みを強化している。特許の事前審査や迅速な権利保護などをワンストップ式に担う「知的財産権保護センター」が現在、全国36か所に創設され、外資企業の知的財産権保護にも努めている。

 ただ、長く続く米中経済摩擦の中で、知的財産権の保護は今も大きな問題の一つとなっている。米国のトランプ政権が今年5月に発表した報告書では、「世界の模造品の63%が中国由来」と非難している。最近でも新型コロナウイルス感染症をめぐり、中国国内で数千万枚単位の模造マスクが出回り、今もなお「コピー文化」が「健在」であることを示す形となった。「上に政策あれば下に対策あり」と古くから言われるように、当局の号令は必ずしも庶民には浸透しない。「パクリ大国」から「技術大国」への道のりは、まだまだ道半ばだ。(c)東方新報/AFPBB News