【9月27日 東方新報】武術で有名な中国・河南省(Henan)の少林寺(Shaolin Temple)が、「少林」に関連する666の商標登録を行ったことが中国で論議を呼んでいる。「1500年にわたる少林寺の文化を守るための措置」と理解する声がある一方、「商標権の乱用では」「少林寺がまた金もうけに走っている」という批判が出ている。

 きっかけは中国の大手アパレル企業「森馬(Semir)」が、「少林功夫(カンフー)」という名称を入れた「国潮少林功夫森馬」というジャージー、Tシャツ、パーカなどのシリーズを販売したこと。中国ではストリートファッションなどに伝統文化を融合させることが流行しており、「国潮」と呼ばれている。これに対し、少林寺の知的財産権を保護する会社「河南少林無形資産管理有限公司」が「名前を無断使用され、知的財産権が侵害された」と抗議声明を出し、666の商品登録を行ったことも発表した。

 5世紀に禅宗の寺として創建され、唐の太宗に僧兵として重用され武術が盛んになった少林寺。1982年の映画『少林寺(The Shaolin Temple)』で一躍世界的に有名になったが、すぐさま国内外で「少林」「少林寺」を商品名にした食品、医薬品、酒類、自動車、家具、宝石などが次々と登場した。少林寺側は商標権を管理する会社を設立。世界各国で商標を登録し、訴訟を起こすなどして偽者を「打倒」してきた。

 今回の商標登録もその流れだが、SNSでは「少林寺がまた商業主義に走っている」「少林カンフーは社会の公共物。現在の少林寺だけものではない」という指摘も出ている。「少林寺をもっとも商売に利用しているのは、当の少林寺」という批判だ。

 少林寺は1990年代末から本格的にビジネスに力を入れた。海外でカンフーショーを行い、テレビ局とタイアップしてショービジネス化したカンフー大会を開き、茶やTシャツなど数百もの「少林ブランド」を販売し、山奥に位置する少林寺を観光名所にした。国内外で少林寺にかかわる映画やイベントがあれば使用料を徴収する。ビジネス化を推進してきた少林寺の釈永信(Shi Yongxin)住職は、やり手として「少林CEO」の異名をとるが、「経済和尚」ともやゆされている。そのため今回の商標登録も「少林ビジネスを独り占めする狙い」「寺院が拝金主義に走っている」と冷ややかな目がある。

 ある中国メディアは「少林寺の名称で勝手に商売する事例は今も後を絶たない。外国のカジノでは少林寺を名乗った武術パフォーマンスを行い、僧は菜食なのに、酒や肉を飲み食いする連中がいる。正しい中国文化を守るため、少林寺の商業保護は必要だ」と理解を示す。

 少林寺では、棒や刀をもはね返す肉体鍛錬法を「鉄布衫」と呼ぶ。SNSやメディアの間では「商標登録は少林ブランドを守る『鉄布衫』となるか」と注目している。(c)東方新報/AFPBB News