■「受け入れられない」

 新たなカリキュラムが通知されたのは、9月の新学期が始まる直前だった。変更は、二つの言語を併用する自治区内全ての寄宿学校で、標準中国語の授業を第1学年から始めることが義務付けられた。開始時期が1年前倒しとなるかたちだ。

 歴史、政治、そして文学も、モンゴル語ではなく標準中国語で教えることが必要となった。

「これは受け入れられない」と前出の父親は述べる。

「いま7~8歳の子どもたちは、10年または20年のうちに自分たちの言語で祖父母と話せなくなるだろう」

 8月には、中国で利用できた唯一のモンゴル語SNSアプリ「Bainuu」が当局によって使用が禁じられた。

 11月になってもそのアプリは使用できない状態だ。オンライン上のやりとりは警察によって監視され、大多数の子どもたちは学校に戻された。

 AFPは、9月に通遼市在住のある男性から話を聞いた。この男性は、地元警察からの脅迫が続くなか、自宅で子どもの勉強を見ていると話していた。

「私の子どもの考え方はまだ伝統的なモンゴル人のままだ。(標準中国語教育を実施する)学校環境に行けば、子どもらはモンゴル人のアイデンティティーを失うだろう」

 米ニューヨークに拠点を置く南モンゴル人権情報センター(Southern Mongolian Human Rights Information Center)のトゴチョグ・エンフバト(Enghebatu Togochog)代表は、カリキュラムの変更は「モンゴルの言語、文化、アイデンティティーを一掃する」という中国の決意を示すものだと指摘する。

「モンゴル族の人々は言語を失うことを本当に嫌がっている。もし失えば、全てを無くすことになるからだ」 (c)AFP/Laurie CHEN