【9月24日 AFP】米航空宇宙局(NASA)のジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)長官は23日、議会で演説し、国際宇宙ステーション(ISS)の運用終了後に中国が戦略的優位に立つのを防ぐには、米国が地球周回軌道上でプレゼンスを維持することが非常に重要だと述べた。

 ISSは宇宙環境下の科学研究施設として、現在のところ2030年まで米国、ロシア、日本、欧州、カナダにより共同運用される予定。

 ブライデンスタイン氏は、「アメリカ合衆国による地球低軌道上でのプレゼンス維持を可能とするには、(ISS運用終了後の)次に起こることに備えなければならない」と述べた。

 そのためにNASAは、地球表面からの高度2000キロ以下と定義される地球低軌道の商業化支援を目的として、2021年度予算で1億5000万ドル(約158億円)を申請している。

 一方、中国は17か国23機関と協力し、自国の宇宙ステーション「天宮(Tiangong)」の2022年までの運用開始を目指している。ブライデンスタイン氏は議員らに向け、こうした状況下で米国が宇宙での優位性を維持するには、地球低軌道の商業化支援が必要不可欠だと警告した。

 中国国営の新華社(Xinhua)通信によると、「天宮」の参加国には、フランス、ドイツ、日本のような先進国だけでなく、ケニアやペルーのような発展途上国も含まれている。

 ブライデンスタイン氏は、「中国は『中国国際宇宙ステーション』と自称するものを速やかに構築し、その宇宙ステーションを米国の海外提携先すべてにどんどん売り込んでいる」「これだけの時間、これだけの労力を費やした後で、米国が地球低軌道を放棄し、譲るとすれば、それは悲劇だろう」と訴えた。

 さらにISSの微小重力環境について、製薬やヒトの臓器の3D印刷といった分野のイノベーションから、黄斑変性患者の治療に用いる人工網膜の生産まで、科学の発展に大きな可能性をもたらすものだと説明した。

 ブライデンスタイン氏は、そのため民間企業に資金を提供し、NASAも一顧客となる宇宙ステーションを建設させる予算を確保することが必要で、「最終的に、米国の利益を考慮しない他国に地球低軌道を譲らない」ために極めて重要だと述べた。(c)AFP