【9月23日 People’s Daily】貧困は恐ろしくない。恐ろしいのは、人々が貧困から脱却するという信念を失うことだ。これは、私(田樺南、Tian Huanan)が2017年に白馬山村で第1書記に就任して以来、最も強く感じたことだ。

 白馬山村は中国・湖北省(Hubei)の重点貧困村。貧困戸は120戸346人。初めて各戸を訪れたとき、最も多かった不満は「お金をかせぐつてがない」だった。

 鮑昇雲(Bao Shengyun)さん一家は貧困戸の典型だった。彼女と夫はいずれも50歳余り。教育レベルも低く、技術もない。山の中腹に住み、長年、荷物運びを生業としてきた。村には観光地があり、鮑さんは毎日、2時間以上も歩いて山頂の観光地まで荷物を運び、販売していた。

 私は貧困脱却の方法を考えるよう彼らを励ました。仲間とともに調査、研究した結果、問題点を発見した。白馬山村は十堰市(Shiyan)の市街地から約30キロ。茶葉産業の基礎ができており、風景も美しい。だが交通などのインフラが劣っていた。道路も整備されておらず、観光地として人気が出なかった。問題点は分かった。そこで私たちは資金を集め、白馬山村に通ずる道路などを整備した。白馬山観光地が「国家3A級観光地」(3A級は観光地に対する5段階の評価のうち上から3番目)に選ばれたのを契機に多彩な民俗文化活動を繰り広げたり、茶葉製造企業を誘致したりした。

 観光地としての環境が改善すると、観光客も徐々に増えた。鮑さんはチャンスと思い、私を訪ねてきた。鮑さんは「田舎暮らし体験ツアー」を企画したいと言った。だがその場所も資金もないという。鮑さんの精神状態が変わったのを知り、私はとてもうれしかった。隣人との関係などを調整し、鮑さんの家を新築し、「田舎暮らし体験ツアー」が始まった。その後、私は村への出入り口で鮑さんとばったり出会った。鮑さんは満面に笑みをたたえ、「仕事はいま、大忙し。年間なら、たやすく3、4万元(1元は約15.5円)稼げる」と自信たっぷりに話した。

 インフラを整備し、産業を育て、「名物」をつくる。私たちの村は「茶葉と観光」によって豊かになり、貧困から脱却した。昔はただの荒れた山だったが、いまでは果樹園や茶畑が広がる。日干しれんがの家は西洋式の住宅に変わった。休日には多くの観光客が訪れ、人里離れた村は都市住民にとっての「裏庭」になった。(c)People's Daily/AFPBB News