【9月23日 AFP】毒グモや毒ヘビ、毒を持つ海洋生物など、さまざまな有毒生物が生息することで知られるオーストラリアで、植物から分泌される「サソリに似た」毒が新たに発見された。このほど発表された研究結果によると、毒素は何週間も続く激しい痛みを引き起こすという。

 オーストラリアに自生するイラノキ属のこの植物は、現地語の名前「ギンピーギンピー(gympie-gympie)」で知られる熱帯雨林のイラクサの一種で、葉や茎にほんの一瞬触れただけでも強烈な痛みをもたらす。その痛みは、欧米に分布する同様の植物よりはるかに強いとされる。

 幅広の楕円(だえん)形やハート形の葉を持つギンピーギンピーは、豪クイーンズランド(Queensland)州北東部の湿潤熱帯地域に主に分布しており、同地域ではハイカーらの間で悪名高い植物だ。

 豪クイーンズランド大学(University of Queensland)の研究チームが先週発表した研究報告によると、植物を覆うとげが刺さると「最初は焼けるような激痛が走り、その後数時間かけて痛みは弱まる」が、それでも「勢いよく閉めた車のドアに体の一部を挟まれた時のような痛み」は残るという。

 痛みは長く続く。そして痛みが消える直前の最終段階でも、シャワーのような軽い刺激によって再び激しい痛みに襲われるリスクがある。

 ギンピーギンピーは、他のイラクサと同様の微細な針状の刺毛(しもう)で覆われているが、ヒスタミンなどの一般的な刺激物質を対象とする過去の検査では何も検出されなかった。

 クイーンズランド大の分子生物学研究所のイリーナ・フェッター(Irina Vetter)准教授によると、研究チームは今回の研究で新種の神経毒ミニタンパク質を発見し、「ギンピチド(gympietides)」と命名したという。

「ギンピチドは植物由来だが、3D分子構造の折り畳まれ方がクモ毒やイモガイ毒に類似し、同じ痛みレセプターを標的とする。これにより、ギンピーギンピーは『動物的な有毒植物』とも言える」と、フェッター准教授は説明する。

 また、ギンピーギンピーがもたらす痛みが長く続く理由については、微細な刺毛が皮膚に入り込んで取れなくなるからではなく、ギンピチドが影響を受ける感覚ニューロンの化学組成を永続的に変化させることで説明できる可能性があると指摘した。

 今回の研究をまとめた論文は、査読付きの米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に掲載された。(c)AFP