■「常習犯」

 ドイさんの団体とは別の組織である韓国タトゥー協会(Korea Tattoo Association)によると、韓国で入れ墨をしている人は少なくとも100万人はいるという。違法な、しかし成長を続ける業界の市場規模は年間2000億ウォン(約185億円)に上る。

 入れ墨の技術を用いて顧客にアートメークを施す20万人の美容関係者も同じく現行法では違反となる。

 近年新たな人気を獲得しているにもかかわらず、公共放送ではモザイクをかけられるなど韓国の特に職場では、入れ墨はいまだ否定的な印象を持たれている。

 医師らは入れ墨の合法化に強く反対している。韓国医師会(Korean Medical Association)のある幹部は、医師以外から施術を受ければ「深刻な感染症やアレルギー反応」を引き起こす恐れがあると述べた。

 ドイさんは自身の団体について、賛同する医療専門家と協力し、彫師のための衛生指針を策定する計画だ。

 ドイさんは14年間のキャリアの中で少なくとも1万人に施術しており、今年7月までは訴えられたことも脅されたことも一度もなかったという。しかし、有罪判決を受けて収入を断たれた彫師もいれば、その結果、自殺した彫師も知っているという。

「とてもひどい状況だ」とドイさんは言った。「ある意味、絵を描いたことが理由で命を落としたのだ」

 常習犯となることを余儀なくされた彫師もいる。キム・ガンソク(Kim Goang-seok)さん(54)は「最初に入れ墨の仕事を始めた25年前、顧客の8割は暴力団員で、大きなトラや竜を何度も彫った」という。

 ガンソクさんは入れ墨の施術で3回起訴され、8か月間刑務所にいたこともあるが、絶対に立ち止まることはないという。「入れ墨は、自分が唯一得意なこと。最初に有罪となったとき、それを受け入れた」 (c)AFP/Claire LEE