【9月22日 AFP】米プロバスケットボール(NBA)のアイコン的存在であるマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)氏が21日、同国ストックカーレースNASCARの最上位カテゴリーであるカップ・シリーズ(NASCAR Cup Series)のチャーターチームを買収し、来季のドライバーとして黒人レーサーの先駆者であるバッバ・ウォレス(Bubba Wallace)を起用すると発表した。

 NBA史上最高の選手と称され、16億ドル(約1671億円)の純資産を持つとみられているジョーダン氏は、NASCARの新チームで過半数株式保有者となり、少数株式保有者としてベテランドライバーのデニー・ハムリン(Denny Hamlin)をパートナーに迎えることになった。

 発表文でジョーダン氏は、「私は米ノースカロライナ州育ちで、両親が兄弟や姉妹と私をレースに連れて行ってくれたものだ。ずっとNASCARのファンだった」「友人のデニー・ハムリンとパートナーを組んで自分のチームを所有し、バッバ・ウォレスをドライバーに迎える機会を得られたことは、私にとって非常にエキサイティングだ」と喜びを述べた。

 NBAではシャーロット・ホーネッツ(Charlotte Hornets)の所有者でもあるジョーダン氏は、自身がオーナーとなることによって、白人が大多数を占めるNASCAR界に新たな観客を呼び込むことや、人種的マイノリティーの参画に弾みがつくことを望んでいるという。

「歴史的に見て、これまでNASCARは多様性に欠けており、黒人オーナーがほとんどいなかった」「NASCARが進化すると同時に社会がどんどん変化を遂げていく中で、このタイミングは完璧だと思われる。自分でも昨今は組織的人種差別の撲滅に向けた活動や寄付を行っており、これは新たなオーディエンスを啓発することや、レースが黒人にとってもっと開かれた機会になるチャンスと捉えている」

 一方、NASCAR唯一の黒人ドライバーであり、ハンドルを握ってチームの原動力になっていくとみられる26歳のウォレスは先日、リチャード・ペティ・モータースポーツ(Richard Petty Motorsports)でレースをすることは二度とないと表明していた。

 ウォレスは今年、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)で黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)さんが死亡した事件を受けて、人種差別反対を繰り返し呼び掛けており、6月にはNASCAR上層部に訴えてサーキット周辺での南軍旗掲揚を禁止することに成功した。

 同月にタラデガ・スーパースピードウェイ(Talladega Superspeedway)で行われたレースでは、ウォレスのガレージに輪縄がつるされていたのが見つかり、チームが警察に通報する騒動が起きた。その後、連邦捜査局(FBI)の捜査では、問題の輪縄は2019年から車庫のドアにかけられていたものだったとして、憎悪犯罪ではなかったと結論付けられた。(c)AFP