【9月28日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)追跡アプリにはさまざまな課題がある。欧州諸国のCOVID-19追跡アプリの取り組みと、その成功度や問題について以下にまとめた。

■ドイツ:「万能薬ではない」

 6月に導入されたドイツのCOVID-19追跡アプリは「感染拡大を抑制するための重要な補助ツール」と考えられているが、シュテフェン・ザイベルト(Steffen Seibert)報道官は「万能薬ではない」と述べている。

 ドイツの人々は個人情報の保護に非常に敏感で、データは厳格に管理されているが、COVID-19追跡アプリはおおむね好評で、ハッカー集団「カオス・コンピューター・クラブ(CCC)」のようにプライバシー保護を頑強に訴える団体でも好意的に受け入れている。

 9月1日現在、アプリのダウンロード回数は1780万回(全人口は約8300万人)。7月初めまでに数百件の感染について注意喚起した実績がある。

■アイスランド:旅行者も追跡

 アイスランドの追跡アプリは導入直後に最も多くダウンロードされ、使用率は人口の約40%と高い。その後、旅行シーズンが始まるとダウンロード回数は再び増加した。この美しい火山国を訪れる旅行者も、追跡アプリをダウンロードするよう促されている。

 他の欧州諸国と異なり、アイスランドの追跡アプリは感染者または感染した疑いのある個人の移動を追跡できる。本人の承諾を得た上で、GPSを利用して携帯端末の地理的な位置情報を取得している。

■フランス:完全に失敗

 フランス政府は6月初めに「ストップコビッド(StopCovid)」というアプリの利用を開始したが、8月中旬までのダウンロード回数は約230万回にとどまっている(全人口は6700万人)。これまでにアプリが警告した感染の危険性がある接触もわずか72件。陽性を自己申告したアプリユーザーは1169人だ。

「ストップコビッド」はデータ機密の面でIT専門家らに批判されている。いわゆる「中央集中型」のアプリで、収集データは匿名化された後に遠隔サーバーにアップロードされる。COVID-19の症状がアプリユーザーに表れた場合、接触者を確認するための他のユーザーデータとの照合はサーバー上で行われる。

 一方、欧州諸国の大半が採用している追跡アプリは「分散型」だ。分散型モデルの場合は、個人情報が携帯電話端末に保存されるため、よりユーザー自身が情報を管理できる。感染者と接触した疑いがあるユーザーのデータ照合も、端末上で実行される。

 グーグル(Google)、アップル(Apple)、国際コンソーシアムが推進しているのはこの分散型モデルだが、フランスが採用した中央集中型とは互換性がない。