【9月26日 AFP】のどかな田舎の食料品店からロボット戦士の基地まで──台湾の職人らは現実と空想を融合させた、精緻なミニチュアの世界を作り出す。

 鄭鴻展(Hank Cheng)さん(51)はインテリアの設計をしていない時は大抵、スタジオでミニチュア作品を手掛けている。

 鄭さんは、台湾中部で目に留まった古い食料品店から、映画「怪盗グルー」シリーズのキャラクター、ミニオン(Minion)のための架空の「秘密基地」まで、さまざまなものを作り出す。秘密基地は、ミニオン形のクッキーの箱を用いて制作した。

 鄭さんにとって再生利用は、永遠のテーマ。倹約家の家庭で、限りある資源を大切にするよう育てられたという。

 鄭さんは、ミニチュアやジオラマが根強く人気のある日本でイラストを学んだ。

 だが、ミニチュアの制作を始めたのは5年前。実物と見間違えるほどリアルな日本人アーティストの作品の写真を見たことがきっかけだった。

 鄭さんが丹精を込め、日本のウナギ料理店を精巧に再現した作品は、日本のコンテストで入賞した。すすけた台所や床の油汚れまで見事に再現している。

「作品のきれいさや本物っぽさではなくて、人々が面白いと思えるような物語性が込められたら」と鄭さん。鄭さんはミニチュア制作に関する本を出版し、個展も開いた。

「作品に再現性とともに『温かみ』が表れているといいなと思う」

■ミニチュア・セラピー

 ヒカリ・ヤン(Hikari Yang)さん(39)は、気分が落ち込んでいた頃、ミニチュアの制作を始めた。

 最初に手掛けたのは、彼女の理想とする日本風の町だった。完成した時、制作過程で「癒やされた」と感じた。悩みを忘れていたという。

 ヤンさんは2016年に共同パートナーらとともに、台湾北部桃園(Taoyuan)にFMジオラマ(FM Dioramas)のスタジオを立ち上げた。作品制作だけで食べていけるようになる最近までは、本業の仕事を続けていたという。

 FMジオラマのポートフォリオには、実生活やSFシーンを特徴とする緻密なモデルがずらりと並ぶ。これらの作品は、完成まで平均で8~9か月かかる。

 スタジオは、台湾各地でミニチュア制作の講座を行い成長を続けている。世界中の制作者に向けて、ミニチュア作品の部材の出荷も行っている。(c)AFP/Amber WANG