【9月20日 AFP】ツール・ド・フランス(2020 Tour de France)は19日、第20ステージ(リュールからラプランシュデベルフィーユ、36.2キロメートル)の個人タイムトライアルが行われ、ステージを制したUTE(UAE TEAM EMIRATES)のタデイ・ポガチャル(Tadej Pogacar、スロベニア)がチーム・ユンボ・ビスマ(Team Jumbo Visma)の同胞プリモシュ・ログリッチ(Primoz Roglic)を逆転し、実質的な総合優勝を決めた。

 今回の異例のツールは、ログリッチが山岳タイムトライアルで大きく崩れる中、ポガチャルが土壇場での劇的な逆転を飾るという驚きの結末が待っていた。今ステージで世代の異なるスロベニア選手二人が見せた争いは、2020年のスポーツ界を彩る名シーンとして歴史に刻まれるとみられる。

 これで総合首位に立ったポガチャルは、マイヨ・ジョーヌ(イエロージャージー)をまとってパリへ向かう最終ステージで大きなアクシデントに見舞われない限り、表彰台の一番上に立つことになる。しかも驚いたことに、21歳のポガチャルは山岳賞のマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(水玉ジャージー)と新人賞のマイヨ・ブラン(ホワイトジャージー)も保持している。

 ポガチャルは「僕はスロベニア出身のただの子どもだ」「2009年か2010年にツールを見始めた頃は、アルベルト・コンタドール(Alberto Contador)やアンディ・シュレク(Andy Schleck)を追っていた。一日中テレビを見て、それから自転車にまたがった」とコメントした。

「最後の上りでは何も聞こえず、全力で踏ん張った」

 一方、第9ステージから12日間、総合首位を守り続けてきた30歳のログリッチだが、最後のヒルクライムでまさかの大失速となり、最終ハードルでつまずいた。しかし敗者になりはしたものの、ログリッチの見せたストーリーが素晴らしいものであることに変わりはない。

 ログリッチは「泣いたよ。この後もまたきっと泣くだろう」「きょうの僕は良くなかったし、彼が勝利にふさわしい。残念だが2位は誇りに思える」「今は頭が混乱しているが、それも仕方がない」とコメント。さらに冷静さを取り戻し、「タデイは今後10年、偉大なライダーであり続けるだろう」と勝者をたたえる器の大きさを見せた。

 ポガチャルもログリッチの心情を思いやり、「プリモシュには申し訳ない。最後の日にイエロージャージーを失うんだから、その痛みは分かる。彼は友人だ」と真剣に話した。

 今年のツールは何人もの若手がステージ優勝を飾り、世代交代を感じさせる大会になった。その中でポガチャルは、このままいけば戦後最年少の総合チャンピオンとなる。(c)AFP/Damian MCCALL