■直接接しないという利点

 ワインの小窓には、ソーシャル・ディスタンシングが確保できるという予想外の利点もあった。

「小窓は木製の羽目板で閉じられていて、客がノッカーでドアをたたくと、中にいるワイン売りが空のボトルにワインを入れてくれた」「つまり、直接接触しない」とカスプリーニ氏は述べた。

 トスカーナ州では、267のワインの小窓が再び使われ始めており、うち149がフィレンツェの中心部にある。

 第2次世界大戦(World War II)で小窓の多くが破壊され、残ったものもつぶして壁にされた。だが、フィレンツェ近郊の風光明媚(めいび)な街フィエーゾレ(Fiesole)で採掘された灰色の砂石や石でつくられた独特の窓枠は今でも見ることができる。

 ワインの小窓で、素晴らしいワインに出会えた飲み手もいた。1982年にフランスで発行されたガイドブックは、世界的に有名なフレスコバルディ(Frescobaldi)のビンテージワインを出すワインの小窓を紹介している。

 ワインの穴という意味の名称を持つ協会「ブケッテ・デル・ビーノ(Le buchette del vino)」は、ワインの小窓の目録を作り、窓に一つ一つ額を付けている。

 映像は、8月12日撮影。(c)AFP / Gildas LE ROUX