【9月18日 AFP】ポーランド下院は18日未明、毛皮用の動物飼育の禁止とイスラム教やユダヤ教の戒律にのっとった肉の輸出停止を定めた動物愛護法案を可決した。法案をめぐっては、連立右派政権の支持基盤である毛皮農家や肉生産者らが猛反対し、政権内が分裂状態に陥っていた。

 先週審議入りした法案は、与党「法と正義(PiS)」が推進。しかし、連立を組む他2党が賛成票を投じることを拒否し、PiSのヤロスワフ・カチンスキ(Jaroslaw Kaczynski)党首を激怒させた。

 愛猫家として知られるカチンスキ氏が、内閣改造や解散総選挙によって他の連立政党を政権から排除する構えを見せる中、議会は17日から長時間に及び審議を続行。最終的にリベラル派の野党が支持に回り、賛成356票、反対75票、棄権18票で法案は下院を通過した。

 動物愛護団体によればポーランドは、中国とデンマークに次ぐ世界第3位の毛皮生産国で、国内約550の毛皮農場で約520万匹の動物が飼育されている。また、イスラエルや欧州域内のユダヤ人社会向けに、ユダヤ教の律法で認められたコーシャ肉を提供する主要輸出国でもある。

 法案をめぐっては、PiSの主要支持基盤である農村地域から批判の声が上がり、16日には首都ワルシャワで毛皮農家やコーシャ肉生産者らが抗議デモを展開して「カチンスキ、農村地域の裏切り者!」とシュプレヒコールを上げた。

 日刊紙ガゼタ・ビボルチャ(選挙新聞、Gazeta Wyborcza)は、法案が可決・施行されれば経済的打撃は約16億ユーロ(約2000億円)に上るとの専門家の見解を報道。ポーランド食肉協会(Polish Meat Association)も、「法案は経済的に有害」で食肉加工労働者や農家、農村地域の住民の生活を脅かすと懸念を表明していた。(c)AFP