【9月18日 東方新報】中国・甘粛省(Gansu)敦煌市(Dunhuang)郊外の砂漠地帯で、公衆トイレのそばに「落とし穴」をつくり、穴に落ちたドライバーから「救出料」を要求していた観光業者が摘発された。その悪質な手口の映像がネットに流され、他の被害者も名乗りを上げたことから発覚した。

 きっかけは今月13日、旅行ブロガーの余さんが、敦煌市郊外のクムタグ砂漠(Kumtag Desert)で8月17日に撮影したビデオをネットに投稿したことだった。余さんは敦煌市中心部から50キロ離れた国道213号線をドライブしていた時、公衆トイレのそばで砂に埋まっていた車を目撃した。自分の車を降り、車とドライバーを引き上げるためロープを投げようとすると、白いシャツを着た男が「おれは地元の人間だ。あんたは『救援許可証』を持っていないから助けることはできない」と言いがかりをつけ、さらに「俺は引き上げ料で1500元(約2万3242 円)をもらうんだ」と言い放った。余さんが男と口論すると、男はその場を立ち去り、余さんが車とドライバーを引き上げた。

 余さんがこの映像をアップすると、その日のうちに驚きや怒りの意味の「いいね」は40万件に達し、書き込みは1万件を超えた。「私もこの場所で同じ目に遭った。この白いシャツの男に助けられたが、300元(約4648 円)を要求された」「公衆トイレを探していてやっと見つかったと思ったら突然、車が砂の穴に落ちた。何か怪しいとは思ったが、やっぱりだまされていたんだ」という書き込みも相次いだ。

 ネットでの反応に敦煌市の動きは速かった。14日には専属調査チームを編成。「落とし穴」を作って現金を要求していた関係者5人を取引強要容疑で取り調べ、そのうち2人を刑事拘留した。

 調べによると、主犯格の男・邸容疑者(37)は2019年3月、この場所に「クムタグ砂漠アウトドアステーション」という施設を設立。観光客向けに車による砂漠の横断ラリーやサンドボード遊び、ゲル(モンゴル式住居)体験などの商売をしていた。公衆トイレは開業と同時につくっており、トイレのすぐそばの地面を軟らかい砂で覆って「落とし穴」をつくり、見た目は分からないようにしていた。穴に落ちた観光客らを助けた後、「うちの施設で遊んでいけば、引き上げ料はタダにするよ」と持ちかけたり、引き上げ料を直接要求したりしていたという。

 中国の刑法では取引強要罪は3年以下の懲役で、悪質な場合は最高7年以下の懲役となる。ウイグル語で「砂(クム)」「山(タグ)」を意味するクムタグ砂漠で、まさかの「穴」を作った悪質な行為に、厳罰を求める声が多く寄せられている。(c)東方新報/AFPBB News